【あんスタ】闇堕ちヒーローの話。【男主】 (ページ14)

今日:59 hit、昨日:31 hit、合計:246,443 hit

14 お誘いの脅威ページ14

.

「それなんの冗談…?」

「私は至って真面目なんですけどね」

「…俺幽霊部員でいいって言ったじゃん。
わたーるも許可してくれたから演劇部入ってるのに」

「許可って、そんな大層なものじゃなかったでしょう。私が部長ではなかったんですからそんな大口叩けませんよ。
それに、あの時の貴方には興味がなかったんですからなんて言ったかも忘れましたし」

一昨年のことを思い出す。

Aはモデル業を辞め、罪滅ぼしのつもりで演劇部に途中入部した。しかし俳優になんてなるつもりなかったし、きっと両親もその道は反対していたからやる気はなかった。強制的に部活に入らないといけないというルールも面倒臭いと思っていた。

それを渉に相談すると、「幽霊部員として入っていればいいのでは?」と他人事感丸出しの意見を貰ったので、Aはそれでいいかと入部してから一度も部活に顔を出したことがない。

部活の後輩である北斗くん__ 氷鷹北斗に怒られたのはいい思い出だ。「早く顔出せ」「出さないなら何で入ってる」、彼は敬語というのを知らないのかとそういう事を気にしないAでも苛立つような怒り方だった。

___ 話がズレたが、このような流れで卒業まで持っていくはずだった。

夢ノ咲は部活に力を入れてないから楽なのに。
というか何で演劇部に公演会があるんだ。
演劇科に任せろそういうのは。

「俺嫌だから」

「私も不服なんですよ。確かにこんな演技の才能のえの字もない人を舞台に立たせるなんて。けれど人数が足りないんです」

「…正直にどうも。演劇科は? あそこなら舞台に相応しい人たちたくさんいるでしょ」

「全く。北斗くんと同じことを言いますね。これは演劇部の公演会なんです。全員が全員主役を狙っている人たちを入れたらどうなると思いますか?」

いや知らねーよと心の中で言う。

逆にどうしてAがOKすると思ったのだろうか。
不思議で仕方ない。

「話し合いだけでもいいので来てください！」

「それって『だけ』じゃないよね。俺何回かやられたことあるよ」

「…困りましたね」

「俺のセリフ」

渉は頑なに断るAの何か弱点を探した。
そして思う。自分も段々と英智に感化されているのではないかと。そんなの苦笑しかでない。

渉はふと思い出す。Aの性格を。

「そういえば Aさんって知ることが好きなんですよね?」

「…」

「演技を知るのも悪くないんじゃ?」

「…」

結局、Aが折れることに。

.