29. 好きな人 ページ29
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「いいよ、橙条くん」
そう言う彼女の額には少し汗が滲んでいる。
Aは「何で遠慮するの?」と強引に彼女の手を握った。
ESが作られ、夢ノ咲という小さな箱から行動範囲が広くなった『プロデューサー』は忙しそうに働いている。
同い年なのに、女の子なのに。
( …髪伸びてる)
「と、橙条くん、手離して…」
「やだ」
「……」
「あんずが手伝ってって言うまで離さない」
「〜〜〜!」
悔しそうに口を結ぶあんず。
それがおかしくて、ふっと笑った。
「て、…手伝ってほしいな」
「うん!任せてっ」
「ぅ…ごめんね。さっきまでドラマ撮影だったのに」
「全然疲れてないから大丈夫だよ」
「どうだった? ドラマ撮影」
「そうだなぁ…クールにするのが難しかったかな。
女の子相手に冷たくするのって慣れてないからさ」
演技だとは言え、やはり女の子に対しては優しくしたい。
クールなキャラが人気なことに些か疑問を募らせる一方だ。
だけど、相手役の女の子もスタッフもいい人ばかりでそこには救われた。
「橙条くんはいつも優しいもんね。ファンに対しても、」
「ねえ、Aって呼んでくれないの? いつもみたいに」
「っ…そ、それは……その、」
「…」
「さすがにファンの皆さんに申し訳ないし、…変な噂立てられて橙条くんに迷惑かけたくない…から」
「別にあんずと変な噂立てられてもいいよ。
名前呼んでくれない方がやだよ。寂しいじゃん」
「ちょ、ちょっと距離近いかな……?」
ぐいっと胸板を押されて遠ざけられる。
Aは不満そうに顔を膨らませた。
( 久しぶりに話して嬉しかったのにな )
進級してから夢ノ咲に行かなくてもよくなった上に、お互い忙しなくしてるせいかロクに顔を見ない。
「あんず〜〜…俺のこと嫌い? 俺は好きだよ。大好き。
だから名前で呼んでよ。ていうか何ヶ月もかけてようやく名前で呼ぶようになったのに、またゼロからになっちゃうの? やだやだやだ!」
「えっと…とりあえず落ち着こっか?」
「じゃあAくん好きって言って」
「言わないよ!?」
「言ってよ!」
「何騒いんでんだよバカA」
「いでっ」
いきなり頭を叩いてきた人物をキッと睨むと、呆れた声で「怖くね〜よ」とバカにされた。
「何で叩くの、晃牙!」
「うるせ〜からだよっ!!」
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かげやま(プロフ) - 轆轤首さん» こんばんは。コメントありがとうございます。返信遅くなってしまい申し訳ありません…!😭現実味あるファンを意識して書いてるのでそう言っていただけて嬉しいです。 (2021年12月12日 22時) (レス) id: d06e41bbdd (このIDを非表示/違反報告)
轆轤首 - 男主くんとスバルくんの関係性が好きです!!ファンのコメントも現実味あって面白いです! (2021年8月7日 19時) (レス) id: 29eaa28498 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - おれをさん» コメントありがとうございます!あんスタは元々現実に近いゲームなのでそこを意識して書いてます。そう言ってもらえてとても嬉しいです(;;)更新頑張ります! (2021年5月22日 23時) (レス) id: 3166492125 (このIDを非表示/違反報告)
おれを(プロフ) - 面白いです!どろどろしたネットの反応がリアルで今まで見たことない雰囲気の作品でこれからどうなるのか楽しみです。最近占ツク離れてたんですけど戻ってきてよかったと思いました!(^^) (2021年5月22日 16時) (レス) id: 4347f6fe12 (このIDを非表示/違反報告)
かげやま(プロフ) - 諒さん» コメントありがとうございます!できるだけファン視点のところから書きたかったので、そう言ってもらえて凄く嬉しいです。ありがとうございます(;;)更新頑張ります。 (2021年5月22日 15時) (レス) id: 3166492125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かげやま | 作成日時:2021年4月19日 3時