【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ15)

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唯一答えを知る者　白檮山狂花ページ15

「ああ、面倒なコトをしてくれたものだ」

自宅である檮山庵(とうさんあん)で、読書をしながら、白檮山狂花は述懐した。真っ白な髪に真っ白な肌、真っ白な服装と白づくめの容姿の中で、血の色そのものの真紅の瞳だけが鮮やかに輝いている。その紅だけが、彼女の持つ色彩だった。
狂花が持つ能力は、「世界を把握する程度の能力」、そして「完璧な演算をする程度の能力」だ。たとえそこが自宅であろうとも外の様子は把握しており、完璧な演算によって未来を予測する力がある。従って、今現在起きている異変の現状はどうなのか、今後どのような展開を見せるのか、狂花は一瞬にして理解した。

「本当に、面倒なコトをしてくれたものだよ。―――そうだろう？空夜」

きっと向こうも自分を見ている事だろう、と狂花は不敵に笑った。犬猿の仲ではあるが、それと同時に、空夜と狂花は互いの理解者でもあるのだ。やる事成す事は大方予想がつく。つまるところ、意外と仲は良いのである。

「……ふん、幻想郷中の人間の時間感覚を狂わせる、か。善か悪かは関係なく、面白ければ協力する―――そんな愉快犯の君らしい引っ掻き回し方だ。そういう所は嫌いじゃないんだけどね。君がするコトは本当にいつも面白いからなぁ、僕も笑ってしまう」

狂花は柄にもなく声を上げて笑った。頭に流れ込んでくる情報の奔流の中で、人々は噛み合わない時系列に混乱している。悪趣味が過ぎるが、空夜にとってこれこそが真の愉悦なのかもしれない。
ファラーシャ・スカーレットに協力する、と宣言するずっと前に、空夜は自分の娯楽の為の下準備は済ませておいたという訳だ。空夜はこれをネタに、ファラーシャ・スカーレットにつくのだろう。全ては自分が楽しむ為だけに。

「博麗霊夢は消えた。事情を知る者は少なく、その貴重な人間の間でも起きた事の時系列にズレが生じる。誰も彼も話が噛み合わない。幻想郷中が大混乱に陥るだろうね。そしてそのどさくさに紛れて、ファラーシャ・スカーレットは幻想郷を手に入れる。―――そういう作戦なんだろう？君は本当に性格が悪いなぁ、空夜！」

あはははは、と狂花は腹を抱えて笑った。余りにも笑い過ぎて涙すら出てくる。人生で一番笑った日かもしれないなぁ、と狂花は上擦った声で呟いた。

「まぁ、君にはわからないだろうがね、きっと上手くは行かない。何故言い切れるかっていうと、僕には君が知らないその先が見えているからだ。精々頑張ってくれよ空夜、僕は檮山庵(ここ)でゆっくり楽しんでるからね」