【募集企画】東方幻想記録物語8巻 (ページ14)

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混乱　呉月和華ページ14

「……あの、一つ聞いても良いでしょうか……」

和華が呟いた。場所は博麗神社へ続く長々した石段。後ろには夏と玲雷が居り、横には先程人里で出会った二条言ノ葉が居る。言ノ葉は人里で怪談話や傭兵などをして生活しているらしく、どうやら助手の少年もいるらしいが、「彼は良いんだよ彼は」と言ノ葉が言うので置いてきてしまった。可哀想な話である。

「なんだい？」

「何故私達は博麗神社に戻ってきたんです？」

そう、あれ程嫌がっていた博麗神社に、不幸にも和華は戻ってきてしまった。今までの総移動距離も馬鹿にならない。前の世界で自堕落な生活を送っていた和華の足は悲鳴を上げそうだった。

「いや、何ね。異変の時はほら、とりあえず神社に行って巫女をやる気にさせるのが重要だと言うじゃないか」

「そんだけですか！ノープランって言いませんかそれ！」

「まあ、そうとも言うかな」

「クソッタレ！」

ぶつぶつと恨み言を吐く和華と、それを窘める夏と玲雷。言ノ葉は愉快そうにけらけらと笑っている。和華は一発殴りたくなったが、丁度階段が終わったところだったので、凶行は未然に防がれた。
博麗神社には、三人ほどが集まっていた。一人は大きな鎌を背負った少女で、髪は金髪で黒い帽子と黒い服を身に纏った、悪魔じみた容姿だ。あと二人は恐らく双子だと予想された。なぜかといえば顔立ちがそっくりだったからである。それぞれ赤と白、紺と白の和服を着ていて、見た感じは十五歳くらいの年だ。

「その――で――たち―――引き締――た気がし―――。封印――で浮か―――ては駄―――だ―――確認しました……」

途切れ途切れではあるが、話し声が聞こえる。話し合いに割り込むのは無粋かと和華は思ったが、そうは思わなかったらしい人間が、話し合いの最中へ突っ込んでいった。―――音原玲雷が。

「あのう、すみません！今、なんのお話されてたんですか？」

玲雷は話をしていた三人の間へ上手く滑り込み、謎のコミュ力の高さで話を聞き出していた。和華達もそれに便乗して三人の所へ駆け寄ると、衝撃的な話が耳に入ってきた。

「それで、霊夢さんが居なくなったんです。一年前(・・・)から」

―――何を言っているんだ？

和華は急に頭が真っ白になった。一年前だって？信じられない言葉だった。何故なら、和華は隕石が降った異変の時に霊夢に会ったからだ。あれから一年どころか一ヶ月も経っていない。だが、少女が嘘をついている風には見えない。

―――何がどうなっているんだ。

和華は混乱を隠せなかった。