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青藍の男の独白 ページ44

俺は、いつだって誰かに守られてばかりいた。


姉さん。
俺があの時、怯え隠れるだけでなく戦えていればよかった。

錆兎。
お前の優しさに甘えていた俺は、最後まで弱いままだった。
お前だけに負担をかけるような戦い方なんて、させないくらい強ければよかった。


全てにおいて自分の力不足が原因だった。


どうして。
泣いてばかりの俺が、最終選別で何もしなかった俺が、生きて今ここに立っているのか。


自分は、生きていてはいけない人間だと思っていた。


どれだけの鬼を葬ろうとも、どれだけの人に感謝されようとも、この思いは消えることはなかった。


足りないものばかりだった。

鱗滝さんの後継として、2人で強くなっていくことを誓った。

しかし結果はどうだ。

錆兎の背中を見て安心している自分がいた。
自分がその背中を並べようなんて思ってもいなかった。

結局、彼に頼っていただけだったじゃ無いか。


何度挫けて歩みを止めかけたかわからない。
でも、止まることだけは出来なかった。
何かしていないと、己を保っていられなかった。




そうして閉ざしていった心をこじ開けたのは、俺よりも歳下の、月色の光を纏う女だった。


初めて会った時、俺はもう構うなと伝えた。

事実だ。俺は傷を治してもらう価値もない。
どうせすぐにくたばる。そう思っていた。


しかしその女は、きらりは、
自分を落とすな、過去に生きるなと。そう言った。


なぜ、何も伝えていないその段階で過去に囚われていることに気が付いたのか。

今考えれば末恐ろしい女だ。

しかし、彼女に救われたことも事実だった。


彼女は、暇さえ見つければいつだって俺に構いに来た。

やれ話を聞いたよだの、やれ差し入れを多くもらったからお裾分けだ、だの。
俺に門前払いされないよう、なんらかの理由をつけて。


流れで彼女の話を聞いているうちに、俺はだんだんと劣等感を覚えていた。


あいつは俺とは違い、光の中で生きている。
闇がない。
きっと歴史ある一族に生まれ、大した苦労もなく剣術を身につけ、順調に柱になるためのステップを踏み、笑顔で生きているのだと。


そんな勘違いをしていた。

それが浅はかな勘違いだったと知るのは、ちょうど5度目の合同任務の時のことだ。


きらりは、頸を切り落とした鬼が消えゆく中涙を流しながら言った
「一人に、しないで、そばに居て、」
という最期の願いに応えた。


伸ばされた手を掴み、頭部を包み込み、
「貴方は一人じゃないよ。大丈夫。私もきっと、すぐにそちらに行くから」
と声をかけた。


自分の中で何かが切れる音がした。

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ハク(プロフ) - 無気力人間Aさん» Aさんはじめまして、コメントありがとうございます!そんなに褒めてくださって嬉しすぎます〜〜!!励みになります!がんばってお話進めて行きますのでこれからも夢主ちゃんの旅路を見守ってあげてください! (2019年11月19日 13時) (レス) id: 0ebe25b1eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力人間A(プロフ) - コメ失礼します!小説に入り込みすぎて見つけてから今までぶっ通しで読んでしまいました、、ほんとに面白くて好きです!文と文も程よく間が空いていて読みやすいです!!とてつもなく続きが気になります、、更新頑張ってください! (2019年11月19日 3時) (レス) id: 59ffb7dac7 (このIDを非表示/違反報告)
ハク(プロフ) - あさん» あさんはじめまして!コメントありがとうございます〜〜!!とても嬉しすぎる言葉です、、!最近忙しくて更新難しいんですけどこの後もお話続きますので良ければご贔屓お願いいたします! (2019年11月1日 23時) (レス) id: 0ebe25b1eb (このIDを非表示/違反報告)
- すごく面白かったです(^^)、全部好きでシリーズの初めから一気読みしてしまいました…、これからも更新楽しみにしてます (2019年11月1日 18時) (レス) id: 87b58a18e6 (このIDを非表示/違反報告)
ハク(プロフ) - Nonさん» のんさんありがとうございます〜!!めちゃめちゃ励みになります!マイペース更新になってしまうんですけどどうかご贔屓ください( ; ; ) (2019年10月5日 20時) (レス) id: 0ebe25b1eb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ハク | 作成日時:2019年7月29日 0時

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