砂吸血鬼 ページ1
月明かりすら入り込まない薄暗い路地裏。
追いかけていた下等吸血鬼が見当たらない。
右往左往しながら探し回る。
「くそっ、見失った」
下等吸血鬼、鎌キリ。
その大きな鎌を振りかざし、大胆に獲物を切り裂いて吸血する。
今晩の買い出しに出かけた際、
たまたま通りがかった道で親子を襲っているところに遭遇したのだ。
念の為常に武器は携帯している。
背中にかけた大きなブーメランを、片手で持ち、構える。
後ろ足を引き、重心を後ろから前へ移動させたその勢いで、ブーメランを投げた。
「シャァァア」
どうやら警戒心の強い個体のようだった。
私の存在に気がついた途端、親子から身を引き、
素早くその場を離れたのだ。
そして今に至る。
「一体どこに行ったんだ…」
上がった息を整えるべく、
立ち止まり辺りを見渡した。
「ギャァァァア！スナァァ…」
また誰かを襲い始めたようだ。
悲鳴を聞いて、すぐさま声のした方に駆けつける。
畜生。
見失った挙句に市民まで襲われてしまうとは、不甲斐ない。
ポケットから小さな黒い丸を四つ取り出し、
それぞれを指の間に挟んだ。
「まずは人命救助が先だ」
投げ技は得意だ。
先ほどの黒玉を鎌キリに向かって投げる。
否…投げようとした。
しかしどうだろう。
悲鳴が聞こえたはずなのに、辺りに市民らしき人物はいない。
これは見間違いではない。
まさか、食べられたか？
いや、悲鳴が聞こえてからそんなに時間も経ってない。
ということは…
「なんだかよくわからないけれど、うまく逃げたようだな」
黒玉を手早くポケットにしまうと、
今度はポーチから細長い棒を4本取り出し、
腕を大きく振りかざした。
「食らえ！爆竹！！」
鎌キリの周りを四角く囲うように爆竹を投げる。
それはパチパチと音を立てて煙をあげ、敵を錯乱させ動きを封じるのには十分だった。
「イヤァァア！」
鎌キリから悲鳴のような声が聞こえたような気がした。
まぁ、気のせいか。
構わずブーメランを再び投げた。
今度は命中し、鎌キリが真っ二つになる。
それと同時に砂と化した。撃退成功だ。
「イヤァァア！！混ざる！混ざる！」
「ん！？」
砂の一部が形を形成したかと思えば、
それは徐々に人間の形を成していく！？
「え、ええ！？」
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作者名：kirakira0804 | 作成日時：2023年8月27日 4時
