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その後の乱闘騒ぎは恐ろしかった。
鬼が三人いると役人は失神して倒れたが、松平家の当主が急いで二人を止めに入り事なきを得た。
「照、おまえという奴は」
「お義父様、私は何も悪い事はしておりませんわ」
「ええ、義姉上は何も悪い事をしておりませんね」
「容保！お前も止めぬか！」
松平容敬。
容保の叔父に当たり松平家本家を取り仕切っている人物だった。
義に厚く何かと苦労が多かった。
「我ら松平家は皇族に仕える身だ。国の過去を守る為のお役目と言われれば逆らえぬ」
「叔父上は生まれて間もない赤ん坊に人身御供になれと？今すぐ死ねと申されるのですか」
「慈悲深いお義父様のお言葉とは思えません。あんまりですわ…Aの両親は我が松平家の一番の忠臣ではありませんか」
二人は義父を詰った。
名家と呼ばれる松平家の分家筋に当たる藤咲家は伝統芸能の名家で京都祇園でも一目置かれる茶人とも呼ばれる父に祇一番の日本舞踊の名取でもある母を持つ。
二人は松平家に仕えており、早くに養女に迎えられた二人にとっては育ての親同然だった。
その娘であるAを産んですぐ事故に巻き込まれ還らぬ人となった後に二人は守ろうと決めたのだ。
「藤咲の血を絶やす気ですか」
「お待ちください、確かに危険はございますが…」
「確かも何もありませんわ。戦場に放り出すのでしょう？まだ赤ん坊だと言うのに」
「ふぐ！」
照は冷たい目で睨み管狐を握り潰す。
「こんきちといいましたね」
「こっ…こんのすけでございます」
「私、政府が好きではありませんの。例に漏れず無責任な時の権力者も。過去に我が松田家を逆賊と罵り、罵倒を浴びせた役人も」
歴史でも有名な話だった。
会津戦争などでも敗戦した会津藩は逆賊扱いを受けたのだ。
主君を最後まで守ったがその被害はあまりにも酷く、その責任の一端を押し付けられたと言っても過言でもない。
「そんなに大事なお役目なら相応しい立場の者がいますでしょう？」
「ですがその…」
「この子が松平家の分家筋故に馬鹿にしているかしら？政府のお嬢さん達には危険だから捨て駒をと考えているならば許しませんわよ」
ギリギリとにぎりしめられこんのすけは殺されると思った。
「照！止めんか」
「チッ…」
舌打ちしながらこんのすけを放り投げる。
結局容敬の仲裁で事なきを得たが、審神者としての才がある為断れなかった。
その上で幾つかの条件をつけ審神者を引き受けることになるのだった。
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作者名：ししゃも | 作成日時：2021年11月26日 12時
