元公安の審神者は歩く人間国宝〜

赤井秀一の苦悩 ページ34

雛が退院した後に政府預かりとなり、宮内庁勤めになり半年。
しばらくは定められた拠点で待機するらしいが、その間連絡が取れずやきもきした。

病気の事もあるが大丈夫か？


「ライ、何をボーっとしているんですか」

「…チッ、バーボンか」

「今舌打ちしましたね！」

幹部入りを果たしたのはいい。
だが三人一組で行動しなくてはならないのは面倒だ。

「貴方が単独行動をするから、こっちが後始末をしているんですよ」

「そうか、一人でした方が早いんだがな…いるのか？」

「この思い上がりが！」


もう一人の男はまだいい。
バーボンとはどうしてもそりが合わないな。

「ん？何です？そのペンダントは…そんな少女趣味があったんですか」

「物を知らん男だな。いや外国人には縁がないか？」

「僕は生まれも育ちも日本です！」

外見からしてハーフだと思っていたんだが、やたらと突っかかって来るな。

「これは御利益のあるお守りだ。勾玉で周りを囲んでいるが…まぁ子供の作ったものだ」

うっかり首から外すのを忘れていた。
だが、これまでこの守り石は俺を守ってくれた。


「紐じゃなくて勾玉と玉がチェーン代わりになっているのか」

「ああ、願いを込めながら戦場に出る恋人や家族に送る風習がある」

スコッチが珍しそうに尋ねるので俺も答えてしまった。

「古来より水晶や守り石となるペンダントは魔除けの為に送られていると聞く」

「その送り主はライの事を心配している人か」

「ああ」

「ハッ、貴方ともあろう人が神頼みですか」

今日はやけに突っかかって来るな。

「死ぬときは死ぬだろう、しかし涙ながらに俺の無事を祈られては捨てられまい」

「自慢ですか！アピですか！」

「何だ？君にはお守りをくれる女性も身を案じてくれる人もいないのか…悪かったな」

「謝られると余計腹立つんですけどね！」

「わぁぁ！バーボン止めろ！」


普段からそりが合わないと思ったが、ここまで短絡的とは思わなかった。

ふとスコッチの胸元に光る結晶を目にした。

「スコッチ、君も身を案じてくれる人がいるのか」

「え？ああ…これは」

「詮索はしないさ。だが大事にしろよ」


こんな組織にいる以上は、送り主を泣かせるのは確実だ。

それでも気持ちは大事にすべきだと思っていた。

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