元公安の審神者は歩く人間国宝〜

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しばらくして、メアリーさんは本国に帰国した。
多忙な身であるのに無理をしてきてくれたようだった。

「行くぞ」

「はい？」

「何を呆けている。外出許可を取ったから食事に行く」

「えっ…ぎゃあああ！」

「耳元で騒ぐな」

米を抱えるようにして抱えられた私はそのまま病院を出て車に放り込まれてしまった。


「あの、先生。何処に行くんでしょうか」

「言っただろ。とりあえずお前を太らせる」

「はい？」

「今のお前は痩せすぎだ。骨と皮じゃないか」

先生…久しぶりに会って早々酷いですね？
うら若き乙女に向かって、そんな骨と皮だなんて酷い。

「日本では平均より太いんですが」

「お前はアザラシぐらいの方が愛嬌があっていいぞ」

「泣いていいですか」


悪気がない分余計に質が悪いと思ったが、町を歩けば逆ナンさされるのが当たり前のイケメンさんだから許されるのか。


「あれ？先生…何で首元に絞められたような跡が」

「こないだ、同僚と食事に行ったんだが…そいつに肥溜めの匂いは止めろと言ったんだ」

「肥溜め…」

「ああ、香水の匂いがきつくて食事をする気にもならないからな」

まさか、同僚って同じFBI捜査官？

それとも科学捜査官？


「その後勝手に逆ギレして首を絞められた。全くアメリカ女性は気性が荒い」

「いや、普通に怒りますからね」

「後は化粧が濃いと言ったら、殴られた」

「イエス、ノーをはっきり言うのが美徳とされても限度があると思うんですけどね！」


前々から先生は口数が少なく誤解をされやすい人だった。


でもそれはどうなんだ。

「同僚は香水等必要がない魅力的な奴だった。化粧をしていた科学捜査官も普段で十分だったんだがな」

「それを言ってあげてください」

きっと貶されたとしか思ってないわ。
先生はただ、無理をしなくても、そのままで十分素敵だと言いたかったんだろう。


なんて言葉足らずな。


「先生、誤解されてます」

「別に問題ない」

「いいえ、大問題です」

FBI捜査官としては優秀かもしれないけど、こんなんで潜入捜査は大丈夫なんだろうか。

「彼女さんにもそんなことを言っているんですか」

「ああ、こないだ別れたがな」

「早い！付き合って一か月も過ぎてないのに」

「ああ、二週間だ」


余計に短いわ。

相手から好意を持って告白されたけど、先生なりに大事にしていたはずだ。

じゃなきゃ付き合わないのに。
言葉足らずな所為で別れるなんてなんて可哀想な先生。

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