トリコフィリア ／ cn ページ10
｢ふふ、超可愛くしてよ、チーノ！｣
楽しみだ、とでも言いたげな表情で告げると、彼女は此方に背を向けた。腰まである綺麗な黒髪が靡き、ふわりとシャンプーの匂いがする。
｢任せとけぇ。とびきり可愛くしたるで。｣
にんまりと口角を上げ告げると、彼女は嬉しげに微笑む。彼女は今回首元までバッサリ髪を切りたいらしい。折角ここまで美しく伸びた髪を切るのは勿体無い気もするが、彼女がそれを望むのなら仕方が無い。
｢それじゃ、いくで。｣
櫛と鋏を手に取り、最後の確認代わりに告げる。こくりと彼女が頷いたのを確認し、彼女の綺麗な髪に鋏を入れる。チョキチョキ、と鋏の音と共にパラパラと床に落ちていく髪の毛。舞うように落ちていく姿も美しいが、矢張り勿体無い。うっとりと髪の毛を見つめながら、優しく丁寧に鋏を入れていく。
三十分か、一時間か。集中して髪を整えていると、気が付けばそれ位の時間が経っていた。｢できたで。｣と彼女に告げ鏡を差し出すと、彼女は自身の姿を見るなり嬉しそうに声を上げる。
｢凄い、いい感じ！有難う、チーノ！｣
｢ん、ほら、この後予定あるんやろ？可愛くしてやったんやから、楽しんでこいよ！｣
｢うん！｣と明るい笑顔と共に元気良く呟くと駆け足で部屋を出て行った彼女。そんな彼女を見送ると、すぐさま視線を床へと向ける。しゃがみこみ、床に散らばる髪の毛を丁寧に集めていく。
こんなに綺麗な髪が、俺のものに。その事実だけで昂りを抑えられない。サラサラと、手触りの良い艶のある黒髪。俺好みの髪の毛。嗚呼、彼女のお陰で今夜から困ることはなさそうだ。
髪の束に顔を埋め、すーっ、と息を吸い込む。顔を包む心地よい肌触り、ほのかに感じる彼女の香り。はぁ、と熱くなった吐息を漏らす。
｢……はよ、髪伸びてくれへんかなぁ。｣
矢張り、人間に生えているものの方が良いのかもしれない。自身の欲望を小さく零すと、いつか彼女の綺麗な黒髪に顔を埋めることを想像し、再び手元の髪の束に顔を埋めた。
─
トリコフィリア：毛髪性愛。毛髪や散髪行為への性的嗜好。ヘア・フェティシズムとも言う。比較的異常な性癖とは離れた“フェチレベル”の性癖だが、「髪の毛にのみ性的興奮をおぼえる」また、「散髪した髪を保存、収集しそれに執着する」というクラスになってくると完全な性癖倒錯と言える。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 397人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
平凡な人(プロフ) - うん。凄い。性癖にドストライクで刺さりました!更新楽しみにしています！ (2022年2月3日 20時) (
レス) @page9 id: 244f5e227a (このIDを非表示/違反報告)
空白(プロフ) - めちゃくちゃ好みです！！毎回更新楽しみにしてます♡ (2022年1月26日 10時) (レス) @page22 id: 765b91b6bf (このIDを非表示/違反報告)
りんごうまい - ところどころ性癖に刺さった (2021年10月21日 23時) (レス) @page20 id: ef60100ca2 (このIDを非表示/違反報告)
たらい(プロフ) - ど趣味でえぐいっすふファンになりやした (2021年8月1日 0時) (レス) id: 0b993ff198 (このIDを非表示/違反報告)
R(プロフ) - 好きです!! (2021年6月13日 14時) (レス) id: f606088b79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：悲哀 | 作成日時：2021年5月28日 19時
