霧に咲くは硝子の花

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「ただいま」


直帰し暗い家に入る。
ほぼ同棲状態になってから、岩橋が帰宅した時に彼がいないのは初めてのことだった。

携帯を見ても連絡はなく。


何かあったのではないかと、嫌な動悸がした。




飲み物を口にしながら、彼が来るのを待つ。
久しぶりな一人の時間なのに、彼に連絡を入れたのはやっぱり好きだからで。



玄関のドアが開く音に、マグカップを机に置いて彼を迎える。



「おかえり」


「ただいま、遅くなってごめんね」



小さい紙袋と、いつもの荷物を置くとぎゅっと抱きしめてくれる。



「ううん、大丈夫」


「家に荷物取りに行かなきゃいけなくて、寄ってたんだ」


「それも？」



小さな紙袋に目をやれば、頭を振る。



「これは、げんきに」



渡された紙袋を覗けば、そこには。





「ブリザードフラワー…？」


「今度、花をモチーフにしたアクセサリーをデザインするのに、花屋に寄って。
これ、げんきにあげたいと思って、買っちゃった」



「綺麗」




ピンクの花が、ハートのガラスの器の中に閉じ込められている。
すぐ棚の上に飾れば、後ろからまた抱きしめられた。




「ご飯作る前に、……いい？」


「……うん」




幸せな気持ちのまま頷けば、そのままキスが落とされた。






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