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“青”――精霊の犯したすべての罪と哀しみを背負うもの。
過去のすべてを知り、遥か永い時間を生き、この世の均衡を保つ精霊。
生まれたときから、ずっと悪夢にも近い過去の記憶がフラッシュバックし、罪と哀しみの深さに気が狂いそうになった。
青の薔薇として生まれてしまった以上は仕方のないことで。
青は罪の象徴。
青は哀しみの象徴。
青は…。
「じん!」
「げんき、また来たの」
駆け寄ってくる玄樹の手には、小さな包みがあった。
「クッキー、一緒に食べよう?」
「ありがとう」
風の精霊が言う、普通の精霊が許されて“青”が許されないというのも分かる。
人と関わることで、過去が見えなくなってしまう可能性を危惧したのだろう。
哀しみと罪を背負う精霊が、それを忘れてしまえばそれは――きっと、神は許さない。
クッキーをほおばる玄樹のそばに、1つ、桃色の小さい花を咲かせて見せた。
「わあ、すごい!」
優しく、つぶさないように花びらに触れる玄樹。
純粋で、穢れを知らない幼子。大きくなって、現実を知ったとき、その手で花をつぶしてしまうのだろう。
人間とはそういうものだ。そうでなければ生きていけないのだ。
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作者名:きぃぽぽ | 作成日時:2019年10月13日 21時