愛している。 ページ1
時計の秒針の音がカチッカチッと音を立てる。
一応、時間は過ぎている。私のせいで時間まで止まってしまったら、お母さんとお父さんはきっと私を嫌う。二人の時間を奪った私を、一生恨む。
だから私は嫌われないように生きていかなくちゃいけない。
・
ガチャリとカギが開く音が響き、私は肩を揺らして起き上がった。
これから二人を出迎えなければならない。
「ただいま、A」
お母さんがドアから顔を出し、笑顔になって私の名前を呼ぶ。
「お帰りなさい」
私はお母さんの可愛らしい笑顔を見ながら小さく答えると、お母さんの荷物を受け取る。
近づくと私の知らないにおいがして、やっぱり二人は私の知らないところにいるんだと改めて実感する。お母さんはまつげの長い金髪の美女で、お父さんは鼻建ちのくっきりとしたいわゆる、イケメン(?)だ。二人とも良く笑顔が似合う。
一方でその二人の娘は死んだような顔をしている。それでも、二人と私は“家族”だという。
前に読んだ本に、親と子は知らずのうちに似てくるものだと書かれてあったが、それが本当なのであれば、私は二人の娘ではないのかもしれない。
それでも私は二人のことが好きだ。
その気持ちに嘘はない。
時々訪れる眼鏡をかけた男の人には、「君は両親のことが嫌いではないのかい?」とか「君はおかしくなっている」と問われるけど、いつも決まって「いいえ」とはっきり答えることが出来る。
「お父さんも、お帰りなさい」
お母さんに続いて顔を出したお父さんに、私は声をかける。
「ああ、ただいま」
お父さんは靴を脱いでいた手を止め、柔らかく答えてくれた。
二人の機嫌の良さに、私はほっと胸をなで下ろす。
家に入ったお母さんはキッチンで機嫌良く鼻歌を歌いながら、鍋で何かを煮詰めている。
ご飯も、食べさせてもらえそうだ。
――幸せだ・・・・・・。
ものすごく、生きていて一番。
・
その瞬間だった。
突然頭が痛くなって、頭の奥から外側まで余すことなくかき混ぜられたような不快感が私を襲った。当然、お母さんとお父さんが私を心配してくれるはずもなく、ただ一人で頭を押さえる。
暴れてしまいたい。
それで、この不快感も収まる気がする。
自分らしくないことを考え始めた私は、もうダメなのかもしれない。
ピー・・・・・・ピピッ・・・・・・ピー・・・・・・
どこからか、機械の音が聞こえてくる。
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作者名:キオンkionn/不服の狼 | 作成日時:2019年5月23日 20時