97.いいんじゃない? ページ48
「ちょ、ちょっと…!?無一郎くん!?」
彼の腕の中から逃れようともがく。
けれど、びくともしない。
「放して?」
「行かせない」
「ど、どこにも行かないからっ!」
よく分からないけれど、これは甘えられてるのかな…?
でも、どうしよう…
焦りはじめたその時、よく知った声が庭に響く。
「Aちゃん?無一郎くん?お庭にいるの??」
蜜璃ちゃんだ!
「ほ、ほら蜜璃ちゃんが来るよ!」
「…。」
呼び掛けても、慌てふためく私を他所に無一郎くんは涼しげまな顔をしている。
「あ、いた!いた!Aちゃ………!!」
私の名前を呼び掛けた蜜璃ちゃんが私たちを見て固まる。
「…み、蜜璃ちゃん…、こんにちは………」
なんとか挨拶を口にした途端、彼女の顔がぼんっと音を立てそうな勢いで真っ赤に染まった。
「わ、私、お取り込み中だったなんて知らなくて!!ご、ごめんなさぁぁぁい!!」
そう言い残して、ものすごい速さで走り去って行く。
「ま、待って!蜜璃ちゃん!!」
呼び止めたいけれど、無一郎くんの膝の上にがっちり固定されているため、追いかけることも出来ず、弁明するまもなく居なく帰ってしまった。
「行っちゃった………」
ぽつりと呟やけば頭上から「そうだね」と言葉が降ってくる。
「蜜璃ちゃん、たぶん勘違いしてるよ」
「何を?」
「な、何をって………!こういうのってお付き合いしてる男女じゃなきゃしないでしょ!?」
自分で言っておいて凄く恥ずかしい。
赤くなっているであろう顔を隠すように俯くと、予想外の答えが返ってくる。
「…。まぁ、いいんじゃない?」
どきっと胸が跳ねた。
それは私達が恋仲たど思われても良いってこと?
「………それって、…どういう意味で言ってる?」
ゆっくり彼を見上げて、どきどきと脈打つ胸の鼓動を感じながら答えを待つ。
「さぁどうだろうね」
けれど、返って来た答えはとても曖昧だった。
「………もう、なにそれ…」
たまに無一郎くんのことが分からなくなる。
何事にも無関心かと思いきや、人が変わったように感心のあるものはとことん追及することがある。
この前、急に抱き上げられた時も驚いたけれど、今日はそれ以上だ。
「ところで、いつ放してくれるの?」
「もう少ししたらね」
宣言通り、暫く放してもらえないままその日は時間が過ぎていった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時