92.恋柱と蛇柱 ページ43
「まぁ!無一郎くんが焼きもち?」
「そうなんですよ。ちょっと可愛いな〜なんて」
ふろふき大根を出した日に抱き抱えられた事を思い出すと少し頬が緩んだ。
「でも最近、少しでも炭治郎くんの名前を出そうものならすぐ不機嫌になるんですよ」
もう炭治郎くんの話はしない方がいいのかな?
でも、お互いが蝶屋敷に出入りしてる以上、会うことも多いので、自然と無一郎くんとの会話の話題にしてしまう。
それに優しくていい人だし。
「なんだ、お前と時透はそう言う仲なのか?」
黙って聞いているつもりだとばかり思っていた伊黒さんの言葉に瞬きを繰り返す。
「そう言う仲というのは?」
「それはだな………」
言いかけて、こほんと咳払いをする伊黒さんがちらっと蜜璃ちゃんを見た。
「つまり、恋仲だ…」
「えっ!?あ、いやまだそんなんじゃ…!!」
慌てて告げると「なんだ」と興味無さげに呟いて「だが、“まだ”と言うことはそういった予定があるのか?どうなんだ?」と聞いてくる。
細かい質問だ。
「言っておくが、奴は鬼殺隊の人間だぞ。その意味を分かっているんだろうな」
言われてどきっとする。
「俺もそうだが、不死身ではない。柱とは言え、人間だからな」
私はずっと自分のことばかりだった。
助けてもらってばかりだから忘れていた。
彼ら鬼殺隊は常に危険と隣り合わせの仕事をしているということを。
「もう、別に良いじゃない!Aちゃんは鬼に二度も襲われているから、その辺のこと分かっていると思う」
運ばれてきた、天丼に手を付けていた蜜璃ちゃんが痺れを切らしたように伊黒さんを見た。
「それはそうか。…Aすまなかった」
「あ、いえ」
「私はAちゃんのこと応援しているわ。それにAちゃんと無一郎くんはお似合いだもの!」
「“お似合い”という言葉に例えお世辞だったとしても嬉しくなる。
「ありがとう」
笑い返して私も天丼に手を付ける。
こんなに高いものをご馳走になって本当にいいのだろうかと伊黒さんを見た。
すると、美味しそうに食べている蜜璃ちゃんに彼が優しい眼差しを向けていることに気がついた。
そう言えば、さっきから蜜璃ちゃんのこと気にしているみたいだったし………
もしかして?と二人を交互に見る。
いつだったか、彼女と甘味処で話していた事を思い出す。
『やっぱり女の子だもの。自分より強い人がいいでしょ?守って欲しいもの!』
なるほど。と思いながら私はご飯を口に運んだ。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時