84.焼きもち ページ35
「そう言えばさぁ、Aまだ歩けなかったときに裏山に行ったんだって?」
「えっ、うん。そうだよ」
「立とうとして倒れかけたって聞いたけど」
ぎくっと肩が跳ねる。
「…何で知ってるの?」
「胡蝶さんが教えてくれた」
あの時はまだ安静にしてなきゃいけない時期だった。
だから慌てて言い訳を並べる。
「早く治したかったから『立ってみたい』ってお願いしたの。炭治郎くんたちはそれに協力してくれただけだよ」
言えば無一郎くんが眉をしかめる。
「炭治郎…?」
「立つ時に支えてくれたの。炭治郎くんのお陰で転ばなかったんだ」
「…。」
「無一郎くん?」
反応がない彼を不思議に思って覗き込む。
すると、彼が突然立ち上がったかと思うと私を抱き抱えた。
「え!?きゃ!」
じぃっとその状態のままじっと見つめられる。
「な、なに?急にどうしたの??」
「僕はAのことこうやって何処まででも運べるよ?」
今一つ意図が読めなかったけれど、隣町で鬼に教われた日の事を思い出す。
「……うん、私が動けなかったあの日もこうしてくれたもんね。あと、蝶屋敷にも運んでくれたよね」
言えば暫く考えてから、返事が返ってくる。
「…。そうだね」
「なに忘れてたの?」
「そう言う訳じゃないけど…」と、言葉を濁らせた後、無一郎くんが首を傾げてに訊ねてくる。
「ねぇ、Aはよく炭治郎って話してるけど、そいつ誰なの?」
「炭治郎くん?彼も鬼殺隊の人だよ。今は蝶屋敷に滞在してる人で………」
そこまで言うと彼から不機嫌そうな視線が向けられる。
「…Aはそいつのこと好きなの?」
「えっ?」
どうしてそうなるの…?
不思議に思っていると彼が口を開く。
「Aはよく炭治郎の話ししてる」
「…。」
それを聞いて、先ほどまでの無一郎くんの行動を思い返す。
急に抱き抱えられたり、炭治郎くんのこと気にしたり………
あれ?それってつまり?
「無一郎くん、もしかして焼きもち?」
「なにそれ」
いつもの調子で聞いてくる。
たぶん、彼は本当に分かっていないんだと思う。
思わずふふふっと笑みが溢れる。
「何が可笑しいの?」
「だって…」
炭治郎くんに焼きもち焼いてる自覚無さそうなんだもん。
でも何でなのかな?
そんなことされたら、私は期待してしまう。
「だって?」と聞き返してくる彼。
「そんな事より、そろそろ下ろして?」
「…。」
「ご飯冷めちゃうよ?」
そう言えばなんとか下ろしてもらえた。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時