81.尊重 ページ32
「もう!信じらんない!!」
ぷくっと頬を膨らませて言えば目の前の少年が首をかしげる。
「何で怒ってるの?」
あの後、私とアオイさんは炭治郎くんたちが『代わりに宇髄さんと行く』と言ってくれたお陰で解放された。
「私、本当に連れてかれちゃう所だったんだよ?」
「なんで?」
私が泊めて貰っている部屋の中、机でお茶をのみながら、きょとんとしている無一郎くんに思わずため息がこぼれる。
「なんでって、宇髄さんは無一郎くんが『私の好きにすれば』なんて言うから、私のこと連れて行くって引かなかったんだから」
「何?Aは行きたかったの?」
「違うけど、宇髄さんは無一郎くんの許可が取れたと思ってたみたい」
そこまで自分で話しておいて思う。
あれ?宇髄さんときたら、私の意見は無視ですか??
「そう。………まぁ結果的にAが行かなくて済んだならいいんじゃない?」
なんて他人事な…
「無一郎くんは私が行っちゃっても良かったの?」
私はずっと無一郎くんのこと、ここで待ってたのに。
私だけだったのかな?
私一人舞い上がってたのかな?
そう考えると苦しくなる。
切なさに俯くと無一郎くんが話し出した。
「僕にはAを引き留める資格なんてないから。…だからAの好きなようにすればいいと思った。Aの事を尊重したいし、僕じゃなくて宇髄さんのとこに行くなら、それを受け入れるつもりだった」
何それ。
その言い方はまるで無一郎くんが私のこと………
なんて期待しちゃうじゃん。
私のこと信じてくれたのかな?
「私は無一郎くんに恩を返したくて、無一郎くんの御屋敷に通ってたんだよ?そんなの行くわけないでしょ」
まぁ、理由はそれだけじゃないけど。と心の中で付け足す。
「それなら良かった」
彼がにっこり笑うから、それ以上は何も言い返せなくなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時