64.目覚め ページ15
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえる。
薄く差し込む日の光に顔をしかめた。
ゆっくり目を開けると天井が見える。
ここは………何処だろう?
まだ体が鉛のように重い。
けれど辛うじて首だけは動くようになっていた。
ゆっくり動かして辺りを見回す。
みたことあるような…ないような眺めだと思った。
丁寧に敷かれたふかふかの敷き布団と掛け布団が暖かくて心地いい。
ふと誰かの気配を感じて、視線を動かす。
昨日の人だ。
昨日の少年が、私のすぐ隣で眠ってる。
でもどうして??
と考えて思い出す。
「川の水で2人ともずぶ濡れだから」と、何処かの御屋敷に入っていった彼。
またすぐに出るようなことを言って私を居間に下ろすと、どこかへ消えてしまった。
そっか、あのあと寝てしまったんだ。
もぞっと彼が動いて、違和感を感じた。
「…!」
だ、抱き、つかれてる?
気が付いた途端に体が熱くなっていく。
な、なんでこんなことに!?
と思っているとすぐ隣にいる彼の目がパチッと開いた。
しっかりと目が合う。
「………あ、起きた?」
「あ、あの………」
「声、出るようになったんだ」
そう言って寝起きの顔でふにゃっと笑う。
「は、はい。そうみたい、です………」
「顔が赤い、もしかして熱ある?」
コツンと彼のおでこが私のおでこに当てられる。
「…っ!!」
あまりの至近距離に驚いて、きゅっと目を瞑る。
どきどきと胸が煩く音を立てた。
「うーん、良く分からないや」
と言っておでこを離した彼に勇気を出して話しかける。
「あぁっ、あのっ………」
「なに?」
「ち、近い、です………」
言えば、気が付いた彼がサッと起き上がった。
「勘違いしないでくれる?昨日戻ってきたらA寝ちゃってるし、体がめちゃくちゃ冷えてて顔真っ青になってるしで大変だったんだから!」
あわてて言いながら少し耳が赤い気がするのは気のせいだろうか………。
「それは、ご迷惑をおかけしました………」
「本当は胡蝶さんとこまで行きたかったのに」
と、むすっとしている彼。
「胡蝶さん………?」
「そう、蝶屋敷!A血鬼術かけられてたから診てもらわないと!」
「蝶屋敷………?」
不思議そうに首を傾げると、彼の顔つきが変わる。
「…まさか、本当に覚えてない?」
覚えてないって、何を?
「僕の名前分かる?」
その質問に私は答えることができなかった。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時