検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:99,774 hit

63.間違えた ページ14

体が冷たい。

鼻が、喉が、肺が、痛い。
我慢できなくてごほごほと咳き込んだ。

「A…!?」

誰かが呼んでいる。
重い瞼をあけると暗闇の中、私を覗き込む影が2つ月明かりに照らされて見えた。

「…。」

「お姉さんっ、良かった!気が付いた!!」

わーん!と私の体に抱きつく小さな男の子。

と、もう一人。

ほっとしたように優しい目で私を見下ろしている少年。

「気が付いて良かった」

「…。」

「A?」

何も言わない私を不思議に思ったその人が問いかける。

「…僕のこと分かる?」

その質問に声を出すのが億劫で首を動かそうとしたけれど、動かない。

体が凄く重い。

「っ!」

「もしかして体が動かない?」

聞いてきたその人が私の手を取る。

「僕の手、握れる?」

言われて力を込めようとするけれど、ピクリとも動かない。

「お姉さん…?」

私の様子がおかしい事に気が付いた男の子が目に涙を浮かべて覗き込む。


遠くから「霞柱様ー!」という数名の声が聞こえてきた。
少年はちらっとそっちを確認したあと、男の子の肩をぽんっと叩いた。

「大丈夫。…とりあえず君は家に帰りな」

「でもっ!」
「家の前まで送ってく」


*****


顔を布で覆った人たちと何か言葉を交わした少年は、体が動かない私を抱え上げて男の子と共に夜道を歩き出した。

動くことが出来ない私は斜め下から彼の顔をぼーっと見つめる。

整った容姿が月明かりに照らされて、綺麗に見えた。

けれど、小さな男の子を目的の場所まで見送ったあと、また来た道を戻る彼の顔はとても悲しそうに見えた。


「僕が判断を間違えた…」

「…?」

「君は肝心なところで言うこと聞かない。なのに協力してもらうのは間違いだった」

「…。」

「危険な目に遭わせて悪かったよ…って言っても、今もし君が鬼の血鬼術で体が動かなくて、記憶も失くしてるんだとしたら、僕のこと忘れちゃった?」

「…。」

「まぁもうどうでもいいよ、どうせ僕もすぐ忘れるだろうし………」


どうしてそんなに悲しい顔をしているの?

手を伸ばしてその頬に触れたい。
聞きたい。

けれど体が動かない。

目の前に居るのに、もどかしい。


「ほんとAって泣き虫だね」


そう言って私の頬に触れて、何故かぽろぽろと流れてくる涙を拭う手はとても暖かかった。

64.目覚め→←62.ムカつく



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (48 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
118人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 時透無一郎   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。