60.鬼 ページ11
「すっかり暗くなった」
進くんの話を聞いていたらいつの間にか日が落ちていた。
「困るんだよね。どこかの誰かさんがいつも僕の言うこと聞かないし」
思い当たる節がある私は「うっ…」と声をあげる。
「いやでも、いつもは大げさでは?」
「…。」
じとっとした視線が向けられる。
「あーもう!分かりました!!それで良いです。とりあえず、進くんをお家まで送りま───」
良いかけたとき、無一郎くんがぴくっと何かに反応して後ろを振り向いた。
「無一郎くん?」
刀の柄に手を当てて構えるものだから、突然の行動に名前を呼べば「ちょっと黙っててくれる?」と低い声がする。
彼のただならぬ様子に私の体に緊張が走る。
じっと息を潜めて耳を澄ませば、風で草が揺れる音に混じって、不自然に草が掻き分けられるような音が聞こえる。
傍にいた進くんが私にぎゅっとしがみつく。
ばっと土手から何かが飛び跳ねた。
同時に無一郎くんが刀を振れば、「ぎゃっ」という叫び声と共に、ぼとっと何かが落ちる音がする。
「ツイてねぇナァ…旨そうな女の匂いがすると思ったら鬼狩りがいるとはナァ…」
無一郎くんの前でもぞもぞ動くそれが、月明かりに照らされた。
彼に足を斬り落とされたそれが、ポリポリと頭をかいた。
身に覚えのある禍々しい雰囲気に私は確信した。
鬼だ。
緑色の体をした鬼がいる。
進くんが言っていたように、その背には甲羅の様なものが見えた。
「ひぃっ…!」と声を上げた進くんが私にしがみつく力が強くなった。
「大丈夫だよ。私たちには無一郎くんがいるから…」
「お前だな、村の若い娘を拐ったのは」
「だったら何ダァ?」
ギュルルルっと切られた足が再生した。
小さい進くんの手をばっと掴む。
「逃げるよ!」
強ばりそうな体に鞭を打って、鬼とは反対方向の道を走り出す。
「霞の呼吸 壱ノ型 垂天遠霞」
「血鬼術 河童憑き」
鬼と無一郎くんがほぼ同時に攻撃を放ったのを背後で感じた。
けれど不思議なことに私はその後の事を覚えていない。
分かっているのは、ガクンっと足が引っ張られるような感覚がしてから、私の意識が遠くなっていったことだけだ。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時