59.目撃談 ページ10
進くんの話を整理するとこうだ。
2週間前。
友だちと遊ぶのに夢中になって帰りが遅くなった進くんが川沿いを走っていると前に人影が見えたという。
それが行方不明になった女の子。
そしてもう一つ。
背中に甲羅のようなものを付けた、人ではないもの姿。
異形なその生き物が怖くなって土手に寝そべって草に身を隠した進くんは、嫌がる女の子を引きずって川に潜り込むその姿を見たらしい。
最初はばちゃばちゃと抵抗するような水の音がしていたけれど、数秒後には止んでしまったと。
恐ろしい気持ちを押し殺して、草の間から顔をあげると、その生き物が女の子を担いで反対側の土手を登ってそのまま林の中に消えたのだという。
「この川には河童の伝説があるの知ってたから、『河童を見た!』ってお父さんお母さんに言ったけど、………信じてもらえなかった」
「それで、女の子が連れ去れたことが言えなくなったの?」
「うん。………黙っててごめんなさい」
また泣き出しそうになる進くんの頭を撫でる。
「何で泣くの?男だろ」
無一郎くんの一言で「うう…」とまた泣き出しそうになる進くん。
「もーっ!無一郎くん小さい子にそんなこと言わない!」
「どうして?」
「どうしてじゃないです!それに無一郎くん言ってたじゃないですか。河童は鬼かもしれないって。怖いに決まってます!!」
「でも泣いてるだけじゃ何も分からない。泣かれても困るんだけど」
私を助けてくれた時と同じようなことを言う無一郎くん。
相変わらずな言い方だな。
懐かしいな…
じゃなくて!
もう一度言い返そうとした時、進くんが叫ぶ。
「ぼ、僕もう泣かない!!」
「え?」
「もうすぐお兄ちゃんになるんだ!僕が生まれてくる弟か妹を守るんだ!」
そう言った進くんの目は本気で、お兄さんの目になっていた。
「進くんは頼もしいね。きっと良いお兄ちゃんになれるよ」
言えば嬉しそうな顔で「うん」と頷いた。
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作者名:月見 | 作成日時:2020年10月11日 5時