『被害者面』 ページ38
朝と変わらず銀時と街を歩き出す。朝と一つ違うのは、私の心の中に土方さんの存在がある事だ。
忘れると決めてから何度も何度も想いを封じ込めているのに、それは彼を目の前にする度にあっさり外に出てきてしまう。
「...やっぱり知り合いだったんじゃねェか。」
『言い方が悪いけれど、私騙されていたのさ。お客だった十四郎様に』
「客？何彼奴遊郭に通ってたの？」
『攘夷浪士の情報を引き抜きにね。』
騙されていた、なんて被害者面本人に聞かれれば引かれてしまうだろうな。あの人はきっと自分の仕事を全うしただけで、私が勝手に恋に落ちて勝手にあの人の言動一つ一つに舞い上がったんだ。
『確かに、初会で来た男にやすやす馴染み客の情報なんざ渡さない。それを見越して彼は私の元へ通い詰めたんだと思う。
私が勝手にあの人の言動に期待してた。だから騙された様に感じて...』
憐れで情けないなぁ。最初は変わった人だと思っていた彼に時間をかけて恋に落ちた。この気持ちは常世の闇の中にいる私の希望だった。
「...もし、外に出たら俺が上を案内してやろうか。」
そう彼は言ったのに。一夜の恋を魅せる職に就いていた私が、実際は彼に魅せられていたのだ。
所詮は仮初め。それは檜山の件で分かっていた。でも、その件が終わってから会いにきてくれたからまた変に期待した。
『まあ過ぎたことさね。今は何も思ってない、忘れたのさ全て。』
「...そうかよ」
口から出たのは大きな嘘。心に残った爪痕はあまりにも深かった。
「でも、お前はもう籠の鳥じゃないんだぜ」
銀時のその言葉は何故か心に残った。
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絹紗(プロフ) - クリームチーズさん» コメントありがとうございます！更新頑張ります！ (2019年8月22日 10時) (
レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - もりこさん» ありがとうございます！励みになります〜！ (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
クリームチーズ(プロフ) - 私も今日初見で来たのですが、本当に好きなお話です！更新楽しみにしてますので、頑張って下さい！！！！ (2019年8月21日 22時) (レス) id: 7b6c8b39e8 (このIDを非表示/違反報告)
もりこ(プロフ) - 今日初めて拝見したんですが、とてもいいお話ですね！土方さん大好きなのでとても嬉しいです！続きがとても楽しみです、更新頑張ってください！ (2019年8月21日 20時) (レス) id: b540dd18b2 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - Decemberさん» コメントありがとうございます！気付けば話が重くなってしまってました笑、更新頑張ります！ (2019年8月18日 7時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹紗 | 作成日時：2019年8月3日 22時
