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『吉原の女』 ページ3

「千早姐様、指名がお入りになられたでありんす。」


『わかりんした。』









常夜の街、地下遊郭都市 吉原桃源郷___。


私がここに初めて来たのはいつの事だっただろうか、ここに来るまでも碌でもない人生であったがこの吉原も碌でもない場所だと言える。



遊女達の目は死んでいた。所詮私達は籠の中の鳥という奴で。自分の運命を悲観的に悲劇のヒロインを気取るつもりもないが、どう考えても私達吉原の遊女は外からすれば“可哀想”な女であろう。









「若くて男前な方らしいでありんすよ、姐様もきっとお気に召しなんすよ。」


『馬鹿な事をいいなんすな。あちきらにとって惚れた腫れたの類は命取りでありんす。』








夢がないとぶくれる彼女はまだ若い禿(かむろ)であった。このくらい幼ければ恋や愛など普通の女が経験するものに憧れを抱くのはしょうがない事ではあると思う。



現実を知ってしまった時あの店先の遊女達と同じ目をしてしまうのであろうか。その日が来ない事を願いつつ鳳仙の支配から逃れる事は出来ないと心の何処かが訴えていた。








『まあまだ美濃も振り袖新造になるにも時間がありんす。』


「わっち、千早姐様みたいになりたいでありんす。姐様は吉原の中でも強くて真っ直ぐで....」






禿、美濃の頭を撫でてやり私はこう答えた。







「吉原の女で一番強くて美しい女は日輪さね。まあ、あちきみたいな者でも此処に太陽が昇る迄はあんたの太陽になってやるさ。」








日輪が禿の私にしてくれたように。私も禿の美濃にそうしてやるのが道理だ。


それで少しこの子が救われるのであれば、碌でもないこの人生も生きた甲斐があるってもんで。








「お客様がお見えになりんした。」







その声と共に襖が開き、中に入ってきたのは美濃の言う通り黒髪の若くて凛々しい男であった。






『ようこそ、おいでくんなまし。』





その言葉と共に夜は更けていく

『酒の酌』→←『けりをつけたい案件』



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絹紗(プロフ) - クリームチーズさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - もりこさん» ありがとうございます!励みになります〜! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
クリームチーズ(プロフ) - 私も今日初見で来たのですが、本当に好きなお話です!更新楽しみにしてますので、頑張って下さい!!!! (2019年8月21日 22時) (レス) id: 7b6c8b39e8 (このIDを非表示/違反報告)
もりこ(プロフ) - 今日初めて拝見したんですが、とてもいいお話ですね!土方さん大好きなのでとても嬉しいです!続きがとても楽しみです、更新頑張ってください! (2019年8月21日 20時) (レス) id: b540dd18b2 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - Decemberさん» コメントありがとうございます!気付けば話が重くなってしまってました笑、更新頑張ります! (2019年8月18日 7時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:絹紗 | 作成日時:2019年8月3日 22時

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