『幕府の犬』 ページ15
『今日は忙しくないのでありんすか?』
「いや、ちょっと厄介な事になってきたらしい。お前に少し話をしに来たのさ。」
どかりと座り真剣な顔で私を見る檜山に少しだけ嫌な予感がした。この前は攘夷浪士と手を組み幕府転覆に為の算段を立てていると話していたが、それが上手く行かなかったのだろうか。
「なんでも幕府の犬が最近俺の事を嗅ぎ回っているらしい。」
『幕府の犬でありんすか...?』
「...千早、お前はここの生まれだと言っていたな?外の事はどれくらい知っている。」
『あちきが知っているのは主さんから聞く事が全てでありんす。』
ここに来る前は攘夷戦争真っ只中だっただろう、外の情勢は私が知っているものとは随分変わってしまったことだろう。
「幕府の犬、細かく言やァ真選組っつー武装警察だ。お前らの言う百華だと思えばいい。」
『真選組...』
「攘夷浪士と手を組んだからかは知らねェが俺らの事も嗅ぎ回ってやがる。もしかしたらここも嗅ぎつけて来るかも知れない。」
私にとっては法に触れた檜山が捕まろうが生き延びようが関係はない。無慈悲だと思われるだろうがこれが吉原の全てだ。客にひどく情を持つなど自分の首を絞めるだけであるのだから。
「事が片付くまではここにはこねェようにする。お前が傷つけられるのは堪ったもんじゃねェからな。」
そういい身体を触る男。私にはその手を拒む権利もなく好きなようにさせておく。
『あちきはいつまでもここにおりんす。今日を超えてもまた会えると信じておりんすから。』
そんな嘘で塗り固められた台詞を吐き、私は一つ気になった事を檜山に尋ねた。
『真選組、とおっせえしたその組織の方にはどんな方がいるのでありんすか?』
「そうだなここにきた時に注意してもらう必要があるか。局長の近藤勲、真選組随一の剣士沖田総悟、そして...鬼の副長、土方十四郎。」
幹部がここまで赴く事はないと思うが知っておいて損はないだろう、と言う檜山。私はそれに返事ができなかった。
『(土方...十四郎...?)』
ただの偶然か、はたまた同じ人物か___
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絹紗(プロフ) - クリームチーズさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - もりこさん» ありがとうございます!励みになります〜! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
クリームチーズ(プロフ) - 私も今日初見で来たのですが、本当に好きなお話です!更新楽しみにしてますので、頑張って下さい!!!! (2019年8月21日 22時) (レス) id: 7b6c8b39e8 (このIDを非表示/違反報告)
もりこ(プロフ) - 今日初めて拝見したんですが、とてもいいお話ですね!土方さん大好きなのでとても嬉しいです!続きがとても楽しみです、更新頑張ってください! (2019年8月21日 20時) (レス) id: b540dd18b2 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - Decemberさん» コメントありがとうございます!気付けば話が重くなってしまってました笑、更新頑張ります! (2019年8月18日 7時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絹紗 | 作成日時:2019年8月3日 22時