『いい友達』 ページ14
『ねえ、月詠。私あの男に惚れちまったみたいなんだけどどうしたらいい?』
「....ごほっごほっ」
吉原の昼、私の自室から窓の外を眺めながら部屋に来ていた月詠に問う。驚いて煙管の煙で噎せた月詠の方を回答を促すように見た。
「A、お主惚れる事はないと言ってなかったか?」
『そうなんだけどさ、この男の隣にいれるなら地獄でもいいと思ったんだよね。』
行き先が地獄であれど側に居たいと思うほどにはただただ彼の事が好きなのだろう。
『...私も馬鹿な女だったってことさ。』
少し優しくされてコロッと好きになってしまうなんてヤキが回ったのか。自分はそんなやつだったかと問いかけてみても答えは出ず仕舞いである。
「まあAが楽しそうならそれでわっちは構いんせん。困った事があったらいいなんし。」
『いい友達を持ったもんだね私は。じゃあ月詠が困っていたら私が駆けつけるよ、例え戦場だったとしてもね』
「ふ、そりゃ頼もしいでありんす」
女のドロドロしたものが疼くこの吉原で小さい頃を共に過ごした家族みたいなものだ。そのくらいなんだって事はない。
『...どうしたらいいものか。』
「どうせ今日も来るじゃろ、その好い人は」
『期待はしないさ、』
来て欲しいと思う反面、期待して来なかった時、私はどんな気持ちになるのか知りたくなかった。
毎日彼の隣で酌が出来れば...だなんてそれは夢のような話でどう考えても叶う事はない。
『私は名前以外彼の事を何も知らないからね。次の約束なんてものある筈がない。』
彼の事を知りたいようで知りたくなかった。これ以上知って仕舞えば何かが壊れる予感がしたのだ。
夢に当てられた私に現実を突きつけるような何かが、そこにはあるように感じた。
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絹紗(プロフ) - クリームチーズさん» コメントありがとうございます!更新頑張ります! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - もりこさん» ありがとうございます!励みになります〜! (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
クリームチーズ(プロフ) - 私も今日初見で来たのですが、本当に好きなお話です!更新楽しみにしてますので、頑張って下さい!!!! (2019年8月21日 22時) (レス) id: 7b6c8b39e8 (このIDを非表示/違反報告)
もりこ(プロフ) - 今日初めて拝見したんですが、とてもいいお話ですね!土方さん大好きなのでとても嬉しいです!続きがとても楽しみです、更新頑張ってください! (2019年8月21日 20時) (レス) id: b540dd18b2 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - Decemberさん» コメントありがとうございます!気付けば話が重くなってしまってました笑、更新頑張ります! (2019年8月18日 7時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絹紗 | 作成日時:2019年8月3日 22時