『傍にいれたら』 ページ11
夜の吉原、自分の部屋の窓から月を眺めていれば聞き慣れた男の声がした。
「よう。」
『まあ、いらしてたのでありんすね。』
檜山が中々来なくなり代わりと言っては何だが十四郎様が此処に来る事が多くなった。
彼は私を求めたりせず酒の酌をしながら少し世間話をしたりする。それが不思議と心地いいとさえ思えるのだ。
『最近はどうでありんすか？外は暑いぐらいの季節でありんしょう。』
「ああ、暑くて仕事も進みやしねェ。上も下も問題児だらけで仕事は増える一方だ」
『ふふ、それはさぞ大変でありんすね。でも楽しそうでありんす。』
仕事が増えて嫌そうな顔をしながらも、本当は上司や部下の方を大切に思っているのだろう。彼の雰囲気がそう物語っていた。
『貴方の部下になってみたいでありんす。あちきもきっと役に立ちなんすよ。』
「馬鹿言え。苦労するだけだぞ」
『花魁ってのは教養は禿時代に厳しく教え込まれるのでありんす。あちきも禿にはここの教養以外にも一般教養も教えんした。』
「そりゃあ、あの馬鹿供より使い物になりそうだ。」
そう言い笑って酒を煽った。
ここから出られる確率は低いと分かりながらも、美濃に一般教養までもを教え込んでいる。
それはいつかあの子が言うように普通の女として恋や愛を経験してここを出て行った時に外で苦労しないためにであった。
『(...いつになったら自由になれるのか。)』
鳳仙の支配が解け自由になった後に吉原の女にはどの様な道が残っているのか。それすらも今は分からないけれど
今宵をこの男の隣に座り、酒の酌を出来る事の幸せを噛み締める他ならなかった。
「どうかしたか？」
『...あちきも酒に当てられてしまいんしたかね』
この男の隣に座る事を幸せだと感じることは、私の残りの人生が地獄に変わる事を意味していた。
好きになりたくはないな、そうなって仕舞えば辛いのは私なのに。だなんて最後の抗いだった
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絹紗(プロフ) - クリームチーズさん» コメントありがとうございます！更新頑張ります！ (2019年8月22日 10時) (
レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - もりこさん» ありがとうございます！励みになります〜！ (2019年8月22日 10時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
クリームチーズ(プロフ) - 私も今日初見で来たのですが、本当に好きなお話です！更新楽しみにしてますので、頑張って下さい！！！！ (2019年8月21日 22時) (レス) id: 7b6c8b39e8 (このIDを非表示/違反報告)
もりこ(プロフ) - 今日初めて拝見したんですが、とてもいいお話ですね！土方さん大好きなのでとても嬉しいです！続きがとても楽しみです、更新頑張ってください！ (2019年8月21日 20時) (レス) id: b540dd18b2 (このIDを非表示/違反報告)
絹紗(プロフ) - Decemberさん» コメントありがとうございます！気付けば話が重くなってしまってました笑、更新頑張ります！ (2019年8月18日 7時) (レス) id: 19a58175b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：絹紗 | 作成日時：2019年8月3日 22時
