隣の席の子は女の子じゃなかった件について-3 (ページ8)

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無事に臨月を迎え、産休に入った私のお腹も大きくなり
この中に一つの命が宿っているんだなと思うと意外と不思議なものだ

それと変わったことと言えばもう一つある

『蘭く〜ん、コーヒー淹れてきたよ？』

「ん、サンキュ」

蘭君も私の産休に合わせて仕事を家でする様になったという事
彼曰く、何かあってからじゃ遅いし、自分の目の届く範囲なら直ぐに対応出来るから…らしい

リビングで仕事をする蘭君を見ながら、普段あまりに目にする事がない真面目に取り組む姿にそれこそ夢を見ている気分だ

「お前今失礼な事考えてただろ？」

『え？なんでわかったの？』

「はぁ…そこは“そんな事ないよ！”って言うところだろ？」

『嘘ついたって直ぐにバレるもん』

「お前昔から顔に出やすいからなぁ？」

なんて、淹れたコーヒーに口をつけながら蘭君は時計に目をやる

「そろそろ散歩の時間だな」

『そうだね、ちょっと準備してくる！』

「おー」

それと日課になった散歩は蘭君の気分転換も兼ねて一緒に近くの公園までを一緒に歩いている

万が一のために備えての母子手帳やら診察券等を用意し、散歩の準備を終えリビングに戻ると蘭君は誰かと電話をしていた

「何回も言うけど俺はアンタらと会って話すつもりはねぇって言ったよなぁ？今更どのツラ下げて会いにくるつもりだよ？」

『っ』

今蘭君が電話している相手が誰だか直感的にわかった
咄嗟に扉を閉め息を潜める

「っ本当しつけぇなぁ!!」

『ひっ』

蘭君なのかと疑いたくなるくらいの怒声に思わず私まで恐縮してしまう
こんなに感情的な蘭君はもしかしたら初めてかも知れない

「この10数年間お前達が自分のガキの誕生日に祝いの言葉の一つでも贈ったことあったか！？【0(ぜろ)】だ！金だけ送ってきやがって自分達のガキが何してようが向き合いもしねぇ！

どこで嗅ぎつけたかはこの際聞くつもりはねぇけど、孫が産まれたら会いたい？寝言は寝て言えや！
俺はアンタらの為にガキを授かったわけじゃねぇんだよ！

この子は俺と女房を繋げてくれた大事な宝だ！
俺はアンタらとは違う！

ガキに寂しい思いなんて絶対にさせない！誕生日だって祝うし！どんな小さい事でもちゃんと向き合う！
それが親ってもんだろ！？＿＿兎に角、今俺達は大事な時期なんだよっ、親だと思うならもう放って置いてくれよ…頼むからっ」

『蘭、君っ』

彼の声が弱くなったのと同時に胸がジワリと温かくなり
涙が一筋流れた