文書071-5-2 ページ24
｢忘れた方がよい事実も、たまにはありますから。…むしろ彼はまともな方ですし｣
神月博士が苦笑しながらそう言いました。
この支部はほかのどの支部よりも職員のクセと個性が強いのは認知していましたが、
幸か不幸か私が直接あったのは戸波博士、神月博士、柊博士、
エージェント・ココノエ、エージェント・シャルドネ、事務員七草程度ですので驚きはあまりありません。
強いて言うのであれば柊博士が猫であったことくらいでしょうか。
ええ、機会があるのであればまず柊博士と七草を収容するべきだと訴えたく思いますよ。
｢それは今はいいでしょう。今回の話は少々特殊…いえ、単純に先のない話です｣
本当は未来になにもつながらない話などしたくありませんし、元は記述してより書架の最奥にしまっておくものでした。
ですが遺しておくには十分すぎるほどに哀れで愚かで悲しい話ですからね。
特に支部の人間はよぉく聞いておくべきかと。
｢つまり？｣
｢終わってしまった話と言いましょうか、私以外に語り手が存在しないのです。
幽霊も人形も悪魔も経験者が収容されているんですが…いかんせんなにも残っていない話ですから面白味に欠けてしまうのです｣
私も私でかれこれこの支部に長期間滞在していますから、関係のある話は自然と尽きていってしまうものです。
集めるのも文章化するのも大変な作業ですから、そうほいほいと出てくるものではないこと、
焦った結果質が低下する可能性を孕んでいることも懸念となってしまいます。
その懸念はやがて不安となり、自らの文章を推敲することへの恐怖となり、
斜め読みで雑に済ませてしまうなんてこともありますから。
切ないものですね。
需要と供給とは一致するわけではありませんし、伝える側が望んだからと言って必ず良いものを紡ぐことは出来ないのですから。
｢これは平和な村の話｣
｢平和ですか。滅んだようには思えないのですが｣
｢失礼、語弊がありました。正しくは"平和主義"の選択をとり武装にたいするアレルギーを発症してしまった村ですね｣
平和という言葉は万能ですからね。
意味を履き違えるのも仕方のないことです。
｢…過去にインドで起きていた非暴力、不服従の独立運動とは？｣
｢関連性はありません。そもそもあれは上手くいった例ですよ｣
｢やっぱそうですか｣
神月博士がしばらく頷き、顔をあげて言いました。
彼女は理系専門、文系を考える脳細胞が死滅しているので別に問題ないかと。
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菫青(プロフ) - 紫清さん» まず、この世界観に惚れてくれたことが作品の親として本望でした。彼女の在り方や文章は私の好みも含んでいたのですが刺さったということで大変嬉しい限りです。こちらこそコメント、ありがとうございました。 (2019年10月19日 20時) (
レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
紫清(プロフ) - 急にコメント失礼します、偶然この作品を読ませて頂いたのですが、謎の多く少し不気味な世界観とそれを反映した文章、そしてダンタリオンさんの在り方に惚れました……！ これからも陰ながら更新楽しみにしております。素敵な作品、本当にありがとうございます。 (2019年10月19日 20時) (レス) id: 85ba6a0490 (このIDを非表示/違反報告)
菫青(プロフ) - シャル＠如月唯奈さん» 私個人の趣味を大きく詰め込んだ設定、文章でしたが読みやすいようで何よりでした。こちらこそ参加させていただきありがとうございます。 (2019年9月25日 20時) (レス) id: 62f559e9d8 (このIDを非表示/違反報告)
シャル＠如月唯奈(プロフ) - イベント参加ありがとうございます！早速読ませていただきました。文章も好みでとても読みやすかったです(^-^)この作品の設定もイイ(笑)更新頑張ってください！ (2019年9月24日 22時) (レス) id: 0214723abe (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：菫青 | 作成日時：2019年9月21日 21時
