『I love you』の物語 (ページ2)

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　さて如何返すか。

　私の頭の中は如何に宇太を傷つけずに、可能であれば快く私に告白したことを後悔させないような、そんな生暖かい返事を探していた。

　「へぇ、宇太にはこんな時間から月が見えるんだ。私は目が悪いからなー、駄目だ、全く見えない」

　時刻は午後四時。今の時期、四時ならまだ昼間のように明るくしかし月が見えないような時間でもない。運と軌道がよければ真ん丸と太った、如何にも肉厚が良さそうな白い月が見える。青い空に濁った白がよく栄えるのだ。

　少々態とらしかったかと再び剃らした焦点を宇太に合わせると、見るからに「そうじゃない」と叫びたそうに項垂れている宇太の姿があった。

　ゴオッと生暖かい夏風が私の頬を撫で汗を乾かす。どうやらこの返事に答えないと私は一生日の目を見れなくなるらしい。

　「そうだなぁ」

　何かを言いかけた宇太の声に、私は己の少し高い声を重ねた。いつもとは違う声に恥ずかしさを覚えながら、続ける。

　「そんなに綺麗な月だったんだ。そっかぁ」

　私の中のエルフが、少しだけ、と小さくて紅い舌を出した。

　「そーだね、そんなに綺麗な月が出てる日にだったら、死んでもいいわ」

　軽くて思い返事に、コイツは気がつくだろうか。

　流し目で答える私の瞳には、思わず声を出して笑ってしまいそうな阿呆面をした宇太が居た。

【月が綺麗ですね＝貴方が好きですor愛してます】
【死んでもいいわ＝月が綺麗ですねに対してyes】