『I love you』の物語 (ページ1)

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月が綺麗ですねページ1

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　「つ、月が綺麗だな！」

　いきなり呼び出され他愛もない話を長々と交わした。初めは同じ部活で家も比較的近い、お互いの住所と私の電話番号を知っているコイツが何故態々人の居ない教室に私を呼び出したのか、全くもって分からなかった。話があるならば部活の帰りでもいいし、何か重要な相談なのであればまた日を改めてというのも可能である。

　彼奴はああ見えて責任感も強く、仕事で年中忙しい母親に心配を掛けたくないと何事も溜め込む悪い癖が染み付いていた。また一人にしたら何が起こるか分からないと心配して大急ぎて部員や同期達に仕事を任せ、珍しく小走りで駆けつけてみれば、少し曲がった教卓にもたれ掛かりながらコイツはぼんやりと空虚を見詰めていた。

　「なんだ、元気じゃん」

　つい、そう言ってしまった。宇太(うた)は私が来たのだと分かると途端に笑顔になって「おう」と誰に言うわけでもなく声を掛けた。これはコイツの癖のようなものだ。

　それからは先輩の愚痴や兄弟の話、最近世間を騒がせ始めた政府関係者の不倫、ネットを使って行った奇怪な事件、クラスのことなど暗い話はその尾も見せず、私達は端から見ても和気藹々(わきあいあい)と話に花を咲かせていた。

　そしてそれからの、それから唐突な告白である。しかもコイツに一番似合わないコイツらしかぬ方法での告白。確かに暗い話ではなくて心中ではこっそりと安堵の溜め息を漏らしていたが、これもこれで正直困ってしまう。

　そういう事ではないんだ、神よ。