九十八粒 ページ11
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でもこうやって真っ正面から見られるのは恥ずかしい。
だから私は少し話題を逸らした。
「日高さんは将来、音楽の道に進まれるんですか?」
ちらっと彼のバッグから覗かせている資料を見る。
「はい!そうなんです!
もう色々と自分で始めていることもあって、すごく大変だけど楽しくて。
だから勉強はやめられないんですよ」
私の質問に対して目を輝かせて話してくれた。
もっと頑張らなきゃ。と笑う姿に見惚れてしまう。
改めて頑張っている人の姿には人を動かす何かがあると思う。
応援したくなるのだ。
でも初めてこんなに饒舌に話してくれた気がするなぁ。
凄く嬉しくて自然と口角が上がった。
本当に、こんなに嬉しそうに話してくれたのが嬉しかったのだ。
今までがつまらなそうだったってことはないけれど、いつも真面目な感じのお兄さんだったから。
キラキラしてるなぁ。
素直にかっこよくて彼の話をうんうんと相槌を打ちながら聞いている。
そしてまたふと思った。
いつか、日高さんの音楽聴けたらいいなぁ。
って。
心の中でそう呟いたはずの言葉は、いつの間にか口からも零れていたようで。
「え?」
「あ…」
驚いたような顔をした彼がこちらを見ていた。
「あ、頑張ります…」
可愛らしくはにかむ彼。
そんな彼になら素直に伝えてもいいかなぁ、だなんて思ってしまって。
「私、日高さんが初めて楽しそうに話してくれて嬉しかったんです。
またそんな話聞かせてくださいね」
と伝えた。
図書館は静かにしなきゃだから、またどこか別の場所で。
とまで付け加えて。
「べ!?そ、そんな??」
「え?」
と、彼の大きな声につられて私の声も大きくなる。
シーンと静まる周りに気がついてパッとお互いが目を合わせた。
ここ、図書館だった…
「「しーーーっ」」
とお互いに人差し指を口元におく仕草をすると、どこからともなく笑いが零れた。
なんだか、高校生でできなかった青春を今している気がして。
心がポカポカした。
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ゆぅる - しゅうくさんは読者をキュンキュンさせる天才ですか?? (2021年12月6日 22時) (レス) @page11 id: b4dee99bf3 (このIDを非表示/違反報告)
しゅうく(プロフ) - ゆあもんさん» ゆあもんさん…!!神ではないですよ!?でも頑張りますね!ありがとうございます!! (2020年5月17日 11時) (レス) id: 547af1fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆあもん - しゅうくさん神ですか?私毎回読ませていただいてます!もうねこの作品は神です!これからも応援するので頑張ってください! (2020年5月9日 12時) (レス) id: 9253ce94df (このIDを非表示/違反報告)
シキ(プロフ) - しゅうくさん» 全然です!!ご自分のペースで更新されてください!いつまでも待ってます! (2020年4月20日 14時) (レス) id: 3de2eab1b1 (このIDを非表示/違反報告)
あやの♪(プロフ) - しゅうくさん» 応援してます!(^^) (2020年4月19日 22時) (レス) id: 5ba2df906e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅうく | 作成日時:2020年3月17日 23時