八十五粒 ページ46
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「俺は、離れないよ」
また顔を上げると彼とやっと目が合った。
「むしろ、支えたいって思ってくれてて嬉しかった。
だって、え、俺の方こそあんな屁理屈みたいなこと言って嫌われて愛想つかされちゃったと思ってたし」
そうやって心底驚いたという顔でこちらを見てくる彼。
「え、いや!!愛想つかすなんてないですよ!!」
思わず声が大きくなる私にもりさんは控えめに答えた。
「ほんとに…?」
そう聞いてくる彼にこくこくと頷く。
「だって、私の方こそ、リスナーとして、その、よくないことしちゃって…
そもそも、頑張ってるあなたを助けたいだなんて言ってたくせに、あなたの辛いところ気づいてあげられなかったりして…」
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沈黙が流れる。
彼は私に今まで溜めていたものをぶちまけてしまった。
でも私は、私こそ気づけなくて申し訳なかったと咎めなかった。
私は彼に今まで自分の本音を隠してきてしまった。
でもその欲にまみれた私の本音を彼はむしろ嬉しいと言ってくれた。
お互いがお互いに謝って、お互いが許して。
普通ならそれでいいんだと思う。
でも、本音を話してみて、やっぱり欲深いなって私の方が思ってしまって。
本当にこのままでいいのかなって思ってしまった。
「…A」
言葉に詰まった私に真剣な顔をして彼は私の名前を呼んだ。
「さっき言ったさ、ななもり。だから拾ったんでしょ?っていうのは、俺自身に自信がなかったからで。
いつも優しくしてくれるけど、本当は呆れられてるんじゃないかなって、不安になって。
だから、そうやって期待してきたAを否定したいわけじゃないの。
むしろ、ついつい甘えてしまう弱い俺がAのそばにいていいのか不安になって。
あんなこと言っちゃって。
もし弱いままの俺を助けてくれるって言うなら、まだこれからも一緒にいて欲しい。
俺はそれがいい。
期待していたとか関係ないよ。
Aがいいんだよ」
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しゅうく(プロフ) - ゆにぃさん» ありがとうございます(´;ω;`)やっと幸せにまとまりました…! (2020年3月17日 23時) (レス) id: 547af1fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆにぃ - え、泣きました() (2020年3月17日 20時) (レス) id: 68d7e1f8f1 (このIDを非表示/違反報告)
しゅうく(プロフ) - ハルカさん» わー!ごめんなさい…こんなシリアスシーンに…ご指摘ありがとうございます! (2020年3月14日 20時) (レス) id: 547af1fa67 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - すみません私も誤字してしまいました (2020年3月14日 20時) (レス) id: 796bfd041b (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ(プロフ) - 誤字です痛いところを疲れた思った となってます さっきなんて、なんで となってます (2020年3月14日 20時) (レス) id: 796bfd041b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅうく | 作成日時:2020年2月19日 23時