【男主】常識人って貴重だと思うんだ【文スト】 (ページ6)

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旅に出たのは？ページ6

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中華街には迷子が多い。

親とはぐれた小さな子が泣いているのに出くわした俺は、どうするべきなんだろうか。

「ねえ、君、どうしたの？」

「……くまさんと、お母さんが、いなくなっちゃったの」

ぼろぼろと大粒の涙をこぼす少女に、俺は優しく笑いかけた。

「くまさんはね、旅に出たんだよ」

「たび？」

「そう。先刻すれ違ったんだけど、君に手紙送るって云ってた。横濱の郵便局に手紙出して、って。ポストじゃ駄目だって」

「……わかった」

「お母さんは君を探してると思うから、一緒に待ってよっか。肉まん食べる？」

「たべる！」

俺と少女は肉まんを買い、立ったまま咀嚼する。熱いけど美味い。
日本の食べ物は大体何でも美味しい。

肉まんを食べ終わり、暫く会話しながら母親を待っていると、それらしき女性が走ってきた。

「あ、おかあさ」

「動いちゃ駄目って云ったじゃない！」

彼女は凄い剣幕で少女を俺から奪い取るようにし、俺を睨み付けて去っていく。

「知らない人に付いていっちゃ駄目って云ったでしょ」と、遠くから聞こえた。

「はは……」

少し、いやかなり、ショックだ。

でも落ち込んでいられない。俺は必死になってぬいぐるみを探して、見付けて、持って帰った。

探偵社の事務机にぬいぐるみを置いておき、今度は郵便局へ。

「あの、失礼します。小さな女の子が手紙を出しに来たら、取っておいてください。俺が取りに来るので」

「申し訳ありませんが、それは出来かねます」

「探偵社員のフランツ・カフカです。どうか捜査にご協力を」

「た、探偵社の方でしたか……何か事件が？」

「いえ、未然に防ぐためです。ご協力感謝します」

職権濫用？別にいいじゃん。

こうして俺は、少女の夢を守ることにしたのだった――。

にしても、あのお母さん苦手だなあ。