歓迎会 ページ1
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「じゃあ、改めて」
「「「「入社おめでとう!」」」」」
扉を開けた瞬間、盛大なクラッカーの音と、テープが僕に降り注ぐ。
ああ――有難いな。
「いやあ、無事入社試験も通過しましたし。先輩として嬉しい限りです」
「……あ、あの、失礼ですけど……」
「はい?」
青年はにこりと微笑んで、頸を傾げた。
云ってもいいのだろうか。凄く失礼な気がするし、怒られそう……。
いやいや、何弱気になってるんだ中島敦。
探偵社員になったからには、云うべき事もびしっと云わないと……。
「ど、何方……です……か」
きょとん、と目を丸くする青年。
髪の左側――僕とは反対だ――が長い赤髪に、同じ色の優しげな双眸。
右目元にある、二つの黒子が印象的だ。
丁寧な口調に違わず服装も丁寧で、白い開襟襯衣と黒いネクタイ、黒いスラックスに同色のベルト。革靴も高価そうだ。
「ああ、失礼しました。自己紹介が未だでしたっけ」
佳かった、怒ってないみたいだ。
それどころか笑顔のまま、自己紹介を始めてくれた。
「フランツ・カフカと申します、以後お見知りおきを」
「……な、中島敦と云います……宜しくお願いします」
「はい、宜しくお願いします。じゃあ敦君、何か飲みますか?」
「あ、は……い、いい頂きま、」
「オレンジジュースでいいですか?」
彼は素早い動作で机に向かうと、橙色の液体をコップに注いで持ってくる。
「有難うございます」と答えれば、「いえいえー」と頭に手を置かれ、わしゃわしゃと撫でられた。
……何だろう、物凄くお母さんみたいだ。
「こんな処に居ると色々可笑しくなりかけますけど、頑張って下さいね。敦君」
「は、はい……?」
この言葉の意味を知るのは、もう少し後の話。
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作者名:きのこ派 x他1人 | 作成日時:2016年10月12日 17時