キミハカルマ （中）

高校生編 52 ページ4

廉side





「さむっ…」


全身びしょ濡れで、拭くものもないし。


帰るとこもない。


俺、孤独過ぎてヤバイねんけど。


台風でどこにも行けへんし。



思いつく場所は学校しかなく、とりあえず正門を乗り越え、風がしのげる場所を探して地面に座った。



大学のこと考える前に今後の居場所探しからやな。



神とは別れて…


海人との同室は解除してもらって…


そしたら2人とも幸せになれるよな…



「俺、どこいこ…」



「どこいこ、じゃないよ…廉」



優しい声がした。


顔を上げて少し遠くを見れば、雨に濡れた、いつもより男前な海人がいた。



「遅くなってごめん…。帰ろう」
「…嫌や」
「大丈夫だから。何もしないから」
「…海人がしんどい思いするくらいなら、俺は外でええねん」
「…俺だって、廉が俺のせいで寒い思いしたりするくらいなら、俺がしんどい方が全然マシだし」


海人がこっちに歩いてくる。
座り込んでる俺の前で片膝をついて、海人が言うんや。


「弱くてごめんね…。ただ、廉が大好きで…。頭も心もいっぱいいっぱいだった」
「…俺が、無神経なんが悪いんやから」
「廉が悪いわけないじゃん。まぁ、あえて言うなら、美人で可愛すぎるのが罪ってくらいかなぁ」


リアクションに困ること言うなや、アホ。
俺におかまいなしで、海人が更に喋る。


「俺、夏休みお寺で修行しようかな〜、煩悩撃退！みたいな感じで。坊主にはしないけど！」
「…は？」
「だって夏休み終わったらまた廉と同室だよ？煩悩が過ったらお経唱えてやり過ごす、みたいな技持っとかないと不安じゃん！」
「……」


想像したら笑えた。
2人して笑う。アホらしい。


そして海人の優しさに涙が出る。


「もう泣かないでよ！俺がいじめたみたいじゃん」
「泣き笑いやっ」
「廉、鼻水出てるよ」
「うっさい！」
「うわっ！俺につけないでよ！」
「紙ないんやからしょうがないやろっ」


ガヤガヤ言い合って、穏やかな空気になる。
海人が立ち上がって空を見上げた。



「…まだ、自信はないけどさ。廉と一生友達でいられる強い男になるね」
「……」
「当分…廉のこと好きだけど…」
「……俺かて、海人のこと…好きやし…」



言葉にすれば同じはずなのに。



同じ意味ではない想い。



「一緒に帰ろ、廉」



自分が苦しいとわかってて、海人は手を差し伸べてくれる。



その手を取る。



一緒に…



友達やから一緒に進めるよな…

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