キミハカルマ （中）

高校生編 50 ページ2

紫耀side



東？北？
よくわかんないけど、女優さんとドライブで田舎に来た。
西？南？
よくわかんないけど、廉の住んでるとこあたりから台風が来てるらしい。


こっちはまだ天気が良い。
なんなら星出てるし。


「やっぱ田舎は空が違うね〜、SHO君も星が好きなの？」
「いや、俺は月が好き」
「へ〜、似合う似合う！」


似合うってなんだよ。
めんどいから、聞き返さないけど。腕なんて組まれて、ただでさえ鬱陶しいし。



「ねぇ」
「何ですか？」
「そろそろ、名前…」
「いいですよ、SHOで」


頰を赤らめて、私の名前も呼んでと言われる。
月を見上げながら、言われるままに呼ぶ。それで満足なのか、腕に重みがきて、密着度が高くなる。



廉も月見てるかな…



あ、あっちは台風ど真ん中だっけ？



昔…というか今もだと思うけど。廉は寂しがり屋だ。溺愛はしてきたけど、現実問題、俺もずーっと一緒というわけにはいかなかった。
泣く廉をなだめるために、言ったんだ。



“死んだ人は月に行くんだよ。パパもママも月にいる。月から俺たちを見てくれてる。だから寂しくなったらみるんだぞ。俺も、見てるから。廉は1人じゃない。つながってるから”



死んだ人がどこ行くとか。


そんなの知らない。


ただ、月はいつでも空にあるから。


太陽みたいに完全には姿を消さないから。



見えないときもあるけど。



小学生の俺に言える精一杯の作り話。



小さな廉は信じてくれて…



2人でよく月を見ていた。



廉は俺の足の間に座って、俺の胸の鼓動を聞きながら月を見て、喋るんだ。



“しょお、パパとママはウサギさんと、なかよくしてるかな？”



とか。



無性に廉の声が聞きたくなる。
飛行機の予約番号を送信してから返信ないし。帰ってくるよう念押しするためにもかけた。





なのにさ。




初めて繋がらなかった。




『お客様のおかけになったーー』





まで聞いて、電話を切った。




約束を破ったのは廉だから




夏休みまで待とうと思ってた気持ちは消えて




気づけば女優さんの手を振り払い、車に乗っていた。




ここから関西ってどのくらい？とか。



台風の状況は？とか。



明日の仕事は？とか。



あと、女優さんどうすんの？とか。




一瞬頭をよぎったけど。






一瞬だった









アクセルを思いっきり踏む。









“しょお”



舌ったらずな、そんな声に呼ばれてる気がした

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