キミハカルマ （中）

高校生編 64 ページ16

廉side


岸さんって、パワフルや。
日本語は時々おかしいけど、予定組みはさすがマネージャーって感じで。夕方までにかなりの数見学ができた。若干弾丸過ぎやけど。

次の場所へ移動中、海人と連絡を取る。海人も予定通り東京の実家に帰ってるらしい。
あの日は学校大騒ぎだったよ、とか他愛のない会話が続く。


神は…怖くて連絡できへん。
元カノさんのことよりも、自分の気持ちがぐちゃぐちゃで、トーク画面に既読をつけることさえ出来なかった。


「じゃ、最後、社会科見学に行こうか！」
「飛行機の時間…」
「まだ大丈夫だから！せっかく来たんだし、東京楽しんで」


いや、兄貴に連れて来られただけやし。俺、東京育ちやねん。ばぁちゃんの影響で関西弁喋っとるだけで。


ニコニコな岸さんに連れて行かれた場所は…


「ここって…」
「紫耀が今撮影してる映画の、提携テレビ局。今日はポスター撮りしてて。今は時間的に雑誌の撮影かな？ま、見学しよっ！」
「……ええよ、頑張ってんの知ってるから」


立ち止まった俺を、岸さんが真面目な顔で見つめてくる。


「見るだけでいいから。仕事してる紫耀、カッコイイぜ？あ、紫耀はもともとカッコイイけど」


知ってるし。


完全なお節介や。


岸さんに手を引かれる。振りほどけへん。



テレビ局は広くて、迷子になりそうやった。無意識に岸さんの手を強く握ってとったみたいで、「なんか、紫耀の気持ちわかるわ」と言われた。


なにが？


スタジオに入ると、岸さんが言ったように、雑誌のインタビューが行われていた。
物音を立てないよう、少し離れた場所から兄貴を見た。


「今回の映画にちなんで、SHOさん、清原さんにとっての大切なものを教えていただけますか？」


インタビュアーの人に聞かれ、主演2人が雑談しながら回答していく。


「俺は家族ですね、ほんとはここ、友達っていうところでしょうけど」
「確かに。ってことで、俺は地元の友達ですね」
「俺、小学生の時に両親を亡くしてて。ばぁちゃんに育てられたんですけど」
「そうなんですね」
「弟の存在に助けられたんです。弟がいてくれたから、両親のことを乗り越えられた。弟がいてくれたから、今俺はここに立ててる。だから弟には感謝しています。宝物です」




どうしてそんな優しい顔で言えるん？



助けられたって…



俺、甘えてた記憶しかないけど。



ああ、ヤバイ。



最近涙腺弱くてあかんわ。



俺も…海人みたいに強くなれたらええのに

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