キミハカルマ （上）

高校生編 42 ページ42

紫耀side



廉からの電話が嬉しくて、夜の撮影は気分良く終わった。


だって、まともな会話したのって…


廉の反抗期は、中学1年のちょうど夏休みくらいから始まった。とにかく無視された。
その時俺は19歳。社会人2年目で、舞台とバイトの仕事に忙しかった。でも忙しいってだけで稼ぎは低くて。焦ってた。毎日必死だった。


廉が中学3年の春、ばぁちゃんが亡くなった。その頃から、一段と距離ができて。ある日突然、関西の高校の申し込み書類にサインしろとかなんとか。

県外の高校？

男子校？

寮に入る？

理解できなくて、心配で、不安で、生まれて初めて廉にキレた。ご近所さんドン引きの口喧嘩になった。


廉が俺の側からいなくなるなんて…


ありえない


廉は俺のすべてで


俺のすべては廉のもので


でも…


俺を睨みつける廉の目に、涙が浮かんでいるのに気づいたとき、県外の高校行きに同意した。



だって泣くくらい俺の側にいたくないんだろ？
いや、よっぽど今の高校行きたかったのかもしれないけど…



頭の良い廉は高校に無事合格。
長期休暇は、「部活が忙しい」の一言で2年間帰って来なかった。俺も仕事が忙しくなって、大人の付き合いも増え、泣き顔の件もあって、長く休戦状態できた。まぁ、我慢できたのは、神の存在があったのが大きいけど。




「SHO君？」
「ーーあ、すみません」


やべ、廉のことに思考がいって、目の前で俺にアピールする女優さんの存在を忘れていた。



「SHO君ドライブ好きなんだよね？撮影オールアップしたら一緒に行かない？私も運転できるし、遠くの長閑な風景みに行くのもいいよね」


高めの声を放ちながら、ルージュのひかれた唇が弧を描く。それほど共演シーンもなかった人なのに、グイグイくる人だ。


まぁ、今付き合ってる人もそろそろ終わりかなと思ってたし。


「いいっすね！どこまで行きます？」


目を輝かせ、胸の谷間を見せつけるように、こちらに身を乗り出してくる。
お互いケータイを出して、行き先を決めながら連絡先を交換する。



別にドキドキもしないし


好きでもない


廉じゃなければ誰でも同じで


それが普通


ただずっと繰り返す



汚い欲は外で捨てて



あたたかな愛を廉に向けていたいから

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