キミハカルマ （上）

高校生編 17 ページ17

廉side



兄貴から電話があった。
明日は修学旅行。行き先が東京だから、電話があるとは思っとった。


大喧嘩した日から、要件がある時以外電話とかしてきたら口をきかないと言ってあったのが功を奏したのか、兄貴はそれを守っていた。


無視で終わらせたかったのに、海人に言われて出るしかなく…
だって電源切ったら、東京から兄貴が飛んでくる。ケータイの電源は絶対切るな、俺からの着信を拒否するなーーそれが兄貴からの、関西行きへの条件やったから。


『修学旅行の準備で忙しいのかよ』
「…ぅん」


開口一番、不機嫌な声に責められる。


『ランドの日、近くでロケあるから、神に時間とか送ってる。ちょっとだけでも顔見たいから、来いよ』
「…ん」


肯定でも否定でもない返事をする。
兄貴は一方的に話を続けて電話を切った。少しして、トーク画面にロケの詳細が送られてきた。


こっちの気も知らんで。
腹立つねん。


中学生になってから、兄貴の過干渉が嫌になったわけやない。



兄貴が俺に向ける愛情と、俺が兄貴に向ける愛情の種類が違うこと…




それが、ただただしんどかった







考えると胸が苦しくなって、部屋を出た。
自販機でジュースを買って、外へ。3年も寮生活しとると、抜け道の一つや二つあるもんや。



ブラブラと歩道を歩く。5月の連休明けとはいえ、まだ夜は少し肌寒かった。外の空気が余計に胸を締め付けた。
気分を紛らわしたくて、神に電話した。


『廉？どした？』


兄貴とは違って優しい声が聞こえてくる。
苦しかった胸がふわっと軽くなった。


「何してるかなぁ、思って」
『明日早いんだから寝ろよ』
「神はもう寝る？」
『俺はまだ荷物チェックして、イメトレして、注意事項説明書と格闘する予定』
「先生って大変やな」
『まぁな〜。でも楽しみだぜ、廉と…一緒だし？』


耳元で、そんな恥ずいこと言わんでや。
会いたくなるやん。


「ねぇ、神ーー」


先生忙しいから、断られると思うやん？
俺が寮生なのも知ってるし。
ちゃんとした大人なら絶対断るやん。


なのにセンセイは、



『え？会いたいの？迎えに行こうか？』
「え？」
『上手く抜け出せよ？』


忙しいんやなかったん？


さっき、俺に早く寝ろって言うたよな？



明日修学旅行やで？


と、ツッコミをしつつ懐かしいことを思い出す。



ああ、そうや…



神は馬鹿兄貴の親友や。



先生なんてしとるけど、ほんとは兄貴と悪ノリばっかしてた奴やった。

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