世界は虹色で出来ている15 ページ16
涙の音がした。
ぽつり、とそれは滑り台の金具に落ちて滑るように地面へ流れていく。
シルクは彼女に向き直って真剣な眼差しを向けて聞いた。
シ「いつから、見えないの」
低い声で疑問符を付けないシルクの訪ね方に、少しだけ肩を震わせたAは
変わらず前を向いたまま、また長い睫毛を揺らして涙を落とした。
『…まだ、７歳でした。私が色を無くしたのは』
シルクは黙ってAの手に自分の手を重ねて置いた。
Aは僅かに指を動かしただけで、特別気にすることなく、ただ静かに話し出した。
『７歳の時に、母が病気で亡くなりました。私の母は絵を描くのがとても上手で…私はそれを見るのが大好きで、父も私もそんな母の事が大好きでした』
シルクがふと彼女に視線を向ければ
Aの瞳から流れる涙は止まっていて
僅かに口元が綻んでいるように見えた
『それから、私は母の好きだった油絵を独学で続けていました。毎日毎日絵を描いて過ごす日々…父はそんな私を咎める事もありませんでした。
それどころか上手だねと笑って優しく頭を撫でてくれました』
シルクの頭はその情景を容易に想像させ、温かい気持ちになった。
…と同時に、寂しさも感じた。
『ある日、私がいつものように絵を描こうとアトリエに向かうと、そこに飾ってあった一切の絵が無くなっていました。
母の描いた絵も、私の描いた絵も、全て…』
一呼吸置いて、Aは続けた。
『父は私に言いました。
「凄いよA。お母さんとお前の描いた絵が富裕層に気に入られてね、全て買い取ると言ってくださった」と…。
子供の私にとって、母の残した絵は形見であり生き甲斐でもありました。
お金なんかの価値は子供には分からないのに…
それが、全て金銭に変わってしまったのです』
そこに先程までの優しい表情は無く、顔は強張って悲しい瞳を潤わせたAの声は止まった。
シ「Aのお父さんは…変わってしまったんだな」
Aは黙ったままこくりと頷いて
震える息で深呼吸をした。
『…父は働いていた会社が倒産してしまってから、金銭的に余裕が無くなって、人が変わってしまいました。私は祖母の家に預けられ…そこで絵を描き続けていました。それが、今の家です』
そんな祖母も老衰で３年前には亡くなりました、と言い終えた頃にはAの目から涙が流れて、頬にその後を幾重にも残していた。
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まゆ - 続きが気になります！更新楽しみにしています！ (2023年4月9日 23時) (
レス) id: d503357f65 (このIDを非表示/違反報告)
Ｋ(プロフ) - つーたんさん» つーたんさん初めましてぇぇ！:*:・(*´ω`pq゛ととととっても嬉しいお言葉を頂いて震えてます(動＆揺)ニヤニヤしてもらえて幸せです( *´艸｀)更新頑張りますー！また読みに来てやってくださいね(*○'3`)★+ﾟ (2018年4月22日 11時) (レス) id: c4cdd82739 (このIDを非表示/違反報告)
つーたん(プロフ) - 初めまして！つーたんと申します！小説読みましたが良すぎて続きがとてつもなく気になりました！表現力がなさすぎてヤバいしか言えないですけど、すごく好きな文で携帯片手にニヤニヤしてしまいますwwこれからも更新楽しみにしてます(*´∀`) (2018年4月21日 21時) (レス) id: 52f751b130 (このIDを非表示/違反報告)
Ｋ(プロフ) - #Ena#さん» ふぁぁあ！！ありがとうございますー！！シルクの色が見えましたぁぁあ！内心踊ってます！(やめて)素敵なお言葉ありがとうございます(*´ω`*)励みになります！これからもがんばりまするんるんるんっ( ) (2018年3月24日 23時) (レス) id: c4cdd82739 (このIDを非表示/違反報告)
#Ena# - あぁぁ…夢主ちゃんよかったぁぁぁ(TT)あぁぁぁぁぁぁ(((殴 これからも頑張ってこの素敵な小説をもっともっと綺麗な色で一杯にしていって下さい！応援してます！！！！ (2018年3月24日 22時) (レス) id: 0bfc9f3afc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ｋ | 作成日時：2017年9月4日 1時
