第三十四 【嬴政】 ページ34
避暑地の中を回っていた。
調理場に置かれた食材、寝床に敷かれた藁、どれも全て昌文君が用意していたのだろう。
部屋の前を通っている時、偶然にも 少し空いたドアから夕が寝ているのが見えた。
それからはほぼ無意識だ。
なるべく音を立てないようにドアに手をかけ部屋の中に入った。
俺が入ったのに気づきもしない夕はスースーと寝息を立てている。
寝床の横で静かに腰を下ろす。
普段の顔も寝ているその顔もとても綺麗だ。
そして出会って間もない頃を思い出す。
最初は俺が王様にも関わらず、いきなり殴ってきて敵意むき出しだったな。
あの頃から思っている。それを俺が口にすることはないが、お前は王宮いや、後宮にいる女以上に美しいと。
ふと、彼女の目から涙が垂れている。
俺はその涙人差し指で拭き取った。
そして頭を撫でた。艶のあるサラサラな髪が触れる。
夕「…ん……漂…。」
嬴政「っ!……。」
ああ、そうだ。まだ、こいつの中には漂がいる。
俺に間違われて命を失った漂が。
突然目に映った、彼女の形のいい唇。
そして思い出すのがあの夜、見てしまった漂と夕のキス。
嬴政「……」
ギシッ──
寝床にかけた手から音がする。
顔を近づけゆっくりと彼女の唇を重ねた。
柔らかな感触、鼻をかすめる華やかな匂い。
ドキッとした。それは初めてだったから。
想いを寄せている女にキスをする事が、
こんなにも触れたいと思う事が。
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星の空(プロフ) - ハルルンさん» そのお言葉を頂いてうれしいかぎりです!自分なりに頑張りたいと思います (2019年11月19日 7時) (レス) id: f9ab9db8e5 (このIDを非表示/違反報告)
ハルルン - この作品大好きです!更新楽しみに待ってます! (2019年11月18日 20時) (レス) id: edb8f085e0 (このIDを非表示/違反報告)
星の空(プロフ) - フッキさん» 他にもキングダムの作品作っておりますのでぜひご覧下さい! (2019年10月4日 12時) (レス) id: f9ab9db8e5 (このIDを非表示/違反報告)
星の空(プロフ) - フッキさん» えええ嬉しすぎます!!!ありがとうございますっ(照)これからも頑張らせて頂くので最後までお付き合い下さいませ。 (2019年10月4日 12時) (レス) id: f9ab9db8e5 (このIDを非表示/違反報告)
フッキ(プロフ) - 何回も星10押しちゃうくらい好きです!更新楽しみにしてます! (2019年10月4日 11時) (レス) id: cf0b992b42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:星の空 | 作成日時:2019年6月21日 20時