狗巻棘の犬

犬４８匹 ページ49

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立ち上がった棘くんが口を開く


この場からいなくなれたら楽なのに

耳を塞げたら楽なのに、なんて考えていると


棘くんは思いもよらない言葉を言った





「…私、狗巻棘はこの方と契りは交わしません」


「「『！！？？』」」



バッ!!とその場の全員が棘くんの方に視線を向ける



平然としている彼はこちらを振り向いて、

悪いことしてる時と同じいたずらっ子の笑顔で

私の腕を引いた


『えっ！ちょっ、！？』



急に腕を引かれたので体勢を崩し

棘くんの胸に飛び込む



もう何が起きているのかわからなくて、

開いた口が塞がらない



「私、狗巻棘はこの方、

狗又Aと契りを交わします」



『へ？？』




そう棘くんが言えば左手の薬指に

狗巻家の呪印が指輪のように刻まれて、

え?え?と薬指と棘くんの顔を交互に見る




「ツナツナ！」

見て見て、と棘くんの指にも同じく刻まれていた



こぼれかけた涙も引っ込んで、

口も塞がらなくて、

何も聞こえない

全部が夢のような、ぼんやりとした世界みたいな






相手の方は驚いてる様子もなく、

ただ1人だけニコニコと祝福の拍手を叩いていた




「ここは私に任せて2人は行ってください」

「外に迎えは待っていますので」



「しゃけっ！」


『え!あの、ちょっと待ってくださ、！』




棘くんは手を引っ張ってあの日とは違って

2人揃って会場から逃げ出した




棘くんとあの人は手を組んでたかのような余裕ぶりで

私も会場の人たちは訳が分からず

唖然としていたのは確かだった








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