Valkyrieの人形はプロデューサー (ページ20)

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第十八話ページ20

廊下ではスバルくんがくるくるとまわったり、飛び跳ねたりしていた。それでも縫い目はほつれない。布がすごいのか、糸がすごいのか……。
「転校生ちゃんって手芸部だったんだね～」
所属しているというか、なんとなく居心地がよすぎて通っているようなものだ。
宗さんの人形でもあるし……。
「さぁ着いたぞ。俺たちの戦場だ」
「うぅ～まだ震えが止まらないけどこれは武者震いだよね♪」
『普通は緊張する。大丈夫。瀬名さんに永遠に追い掛け回されて軟禁されるか、ステージで歌うのどっちがいい？』
私がスマホを見せると真くんの震えはピタリと止んだ。
ちなみにこれは本気である。実際に、
『真くんがステージの上でライブするより瀬名さんに永遠に追い掛け回されて軟禁されるを選んだらやってくれますか？』
『ゆうくんがそんなこと言ってくれるならやってあげてもいいよ～』
と返信された。
せっかく瀬名さん誘ったのに……。まぁいっか。
私は皆に「頑張って！」という意を込めてガッツポーズをした。
「いっくよ～☆」
スバルくんが天真爛漫に舞台上へ飛び出した。出遅れて、他の皆も慌てて飛び出す。私はステージ袖で見守っていた。
相手は天下無敵で圧倒的なパフォーマンスを誇る『紅月』。でも、こっちも負けてない！
『Trickstar』の衣装は照明やサイリウムに反射してキラキラと輝く。元々ラインなどにラメがついた布だけれど、まるで、魔法にかかったあとみたいだった。
すごい……。この感動を忘れないように、私は目の前の光景を記憶に刻む。いつの間にか、光をださずに無色のままサイリウムを振っていた。