92 ページ41
その時、ピンポーンと自分の家とは違う少し品のいい音が鳴った。
来たか。と言いながら部屋を出て行ったココの背中を見送り、少しして聞こえてきた知らない声に、少し背筋を伸ばす。
「やぁ、こんにちは」
ガチャっと開いた扉から入ってきたのは、手に革の鞄を持って白衣を着た人の良さそうなおじさん。
「顔色はいいね
ご飯も食べたんだって?熱は計ったかな?」
『え、ぁ、まだ…です』
本当に来た!!!と言う思いで見つめていると、不意に聞かれた質問に少し慌てる。
そのあと、体温を測って、軽く診察を受けて、薬は引き続き飲んでおいてね。と言う先生にコクリと頷いて礼を述べた。
「昨日はかなり熱があったけど、もうすっかり良くなってよかった」
彼のおかげだね。と笑う先生の言葉にボッと顔が熱くなる。
が、一瞬で今度はサーーっと体温が下がった。
『……昨日…?』
呟きながら恐る恐る先生の後ろにいるココを見上げた。
「一晩中熱でうなされてたんだぞお前」
その言葉に布団の上に置いていたカバンからケータイを取り出して日付を見る。
『1日経ってる……』
てことはつまり、シャワーも浴びずにココとあんな至近距離にいたと言うことで。
抱えられた時も……
『お、』
「「お?」」
ケータイを見つめたまま口にした声に、視界の端で2人が首を傾げた。
『お風呂…お借りします……』
「は?
病み上がりだろ」
何言ってんだ。と腕を組んでダメだと言うココとは逆に、先生はクスクスと肩を震わせている。
「まぁ、熱は下がってますし、湯冷めさえしなければ大丈夫ですよ」
にっこりと笑って言ったこの先生は、それでは。と扉へ向かった。
『あ、ありがとうございました!
あの、お金は…』
今手持ちはそんなに無いし、保険証も家だ。
「大丈夫ですよ、彼から貰ってますので」
へ?と出た声と重なるように、お大事に。と告げて帰っていった先生。
お金いくらだったんだろ。
家にお医者さんが来るなんて、映画やドラマで見る豪邸に住むお嬢様しかしないんじゃなかったの!?
というかこの部屋…家?も広すぎんか!?
ココの家って言ってたけど……
しかも道を走る車の音も聞こえない。
何階?
というか昨日から寝たこのベッドってもしかしなくてもココの…!?
私ココのベッドで寝てたの!?
ココはどこで寝たんだろ…一晩中うなされてたって………寝顔見られてたってことじゃん!!!
462人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉兎(プロフ) - えりちゃんさん» 初めまして!コメントありがとうございます☺️ なんと2回目!楽しんでもらえて嬉しい限りです!! これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!✨✨ (6月15日 11時) (レス) id: 51ccdf4ac7 (このIDを非表示/違反報告)
えりちゃん - はじめまして☺️実は読ませてもらうの2回目なんですが、きゅんきゅんが止まりません!毎日の楽しみになっています💕 (6月15日 2時) (レス) @page7 id: 84c92b84c7 (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - 香恋さん» コメントありがとうございます! はじめまして☺️ 中毒症状出ましたか〜夜更かしまで😂😂 嬉しいコメント励みになります✨ありがとうございます🥰 頑張ります!!💪 (2023年1月29日 20時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
香恋 - はじめまして!一昨日この作品を見つけて、テンポも良いし面白すぎて読むのが止まりませんでした!読む手が止まらなくて中毒症状出ました笑。面白い展開と文才の凄さに夜通し読んでしまいました!更新楽しみにお待ちしてます😭 (2023年1月29日 13時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
玉兎(プロフ) - れなさん» コメントありがとうございます!!✨ 嬉しいお言葉感謝感激です!!🥳 地道に下書き進めてますので少しお待ちください!よろしくお願いします☺️ (2023年1月24日 22時) (レス) id: 5cb8755336 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉兎 | 作成日時:2022年10月28日 18時