ちょっとおかしなキミの金銭感覚【九井一】2

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「お、おれ用事思い出したから行くわ
またねAちゃん、大学で」



最後の最後にそこを強調した男に心の中で舌打ちをする。



『え、あ…うん、？』


微妙な返しをして、バイバイ。と手を振るAを後ろから見つめながら、パチっと髪止めをつけた。



「痛くねぇ？」


『うん、平気
ありがとう！！
すごく嬉しい！』


また横に立った俺にそう言うAは、そっと手を後ろに回してその髪止めに触れる。


『でも、よかったの？』


「ん？」


『貰っても』


「店で見てた時からAに似合うと思ってたし、ソレつけてるAが見たかったから

…って理由じゃダメか？」



肩に落ちているAの髪に指を通しながら言えば、ダメじゃない。とまた照れたように言うA。



『ありがとう大切にするね

毎日つける』


「いくらでも買ってやるよ
20個でも30個でも」



『そんなにいらない』


ふふっと笑ったAに笑い返して、既に空になっている皿とラテを確認した。



「んじゃ行くか」


『どこ行くの？』


「デートの続き」



そう言ってAの手を掴んで椅子から立たせれば、デート。と言葉を繰り返して赤くした顔で一度頷く。



繋いでいない方の手で持ち上げたトレーを返却して店を出る。



「そういえばさっきのやつ名前何？」


『んーーー確か……』



俺の問いに空を見上げたAに、ダチじゃねぇの？と聞けば、うーん。となんとも微妙な顔をした。



『ちゃんと話たのも今日が初めてなんだよね』



「なんだよ
知り合いでもねぇじゃん」



『そうなんだけど、あの場で友達じゃないとも言えなくて』



困ったように笑うAに、まぁそうだな。と返す。



『話したことはないんだけど、友達や周りの女の子がイケメンだって話してたのは聞いたことあって
顔は知ってたの』



Aのその言葉に少しざわついた心のままアイツの顔を思い出す。


イヌピーの足元にも及ばねぇ。




『でもココの足元にも及ばないよね
結局名前思い出せないや』



そう言って、なんだっけな。と呟くAに目を見開いた。


今まで容姿を誰かに褒められたこともないし、引き合いに出されたこともなかったけど






めちゃくちゃ嬉しい。





しかもそれが自分の好きな人からとなると、今までこんなに嬉しいことあったか？と思うほど嬉しさが込み上げた。




俺今ならAのために月買える。

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