292.優しい仮面(キム・テレ) ページ45
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「それだけ俺達と一緒にいる時間が楽しいってことですよね。それなら嬉しいです」
「まあそうなんだけど……でも変じゃない? あんなミステリアスな感じでやってたくせにいきなり……あからさまにキャラ作ってたって思うでしょ」
「そんなわけないじゃないですか。確かに最初は別人なんじゃないかってびっくりしたけど、俺、今の何処か抜けてて、たまに冷静でいられなくなったり変な言葉使っちゃうナナ兄さんの方が好きです。親しみやすいし、かわいいから」
「かわ…………ありがとう。テレは優しいね」
つい言ってしまった「かわいい」という言葉に、ナナ兄さんはひくりと引き攣るような顔をして。すぐにそれを誤魔化すように咳払いをしてから、眉を下げて笑った。
「よくN͜͡umberのメンバーやフェテク兄さんには完璧じゃない素の方が好きだって、キャラを作らずありのままの姿で表舞台に居られたらよかったって言われてた。そっちの方が俺も楽だったろうって。だからメンバーといる時間は心地よかったけれど……やっぱりファンは俺の完璧な姿が好きだと思うから」
そこまで言って、ナナ兄さんは考え込むような素振りをした。
「うーん……なんて言うのかな、例えば仮面をつけてる人……時勢的にマスクとかのほうが想像出来やすいかな。まあとにかく、顔全体が見えない人って、実際よりも良く見えることが多いでしょ。たぶんそれって見えない部分に自分の理想を当てはめちゃうからなんだよね。だから仮面とかマスクを外したときに『想像してたのと違った』ってがっかりするんだと思う。
……多分、俺もそうなんだよね。一度こういうキャラクターで舞台に立った以上、隠したものは隠したままでいないと駄目だって。デビューする前の俺を知ってるメンバーやフェテク兄さんとかと違って、ファンの人はN͜͡umberの俺しか知らないしそれが全てだから。どんなに大変でも罪悪感があっても、俺にはファンが求める『完璧なN͜͡umberのナナ』でいる責任があると思ってた」
「……ナナ兄さんこそすごく優しい人ですよね。ファン想いで」
微笑みながらそう言ったナナ兄さんを見て思う。ナナ兄さんが仮面を付けているなら。それは簡単には壊れないほど固くて、そして優しい仮面だ。どう生きたら、こんなにも誠実に、覚悟を持ってアイドルであろう思えるのだろう。
不思議に思いながら口にした言葉に、ナナ兄さんはふっと小さく笑ってから「そんなことないよ」と返した。
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アップルパイ(プロフ) - なのこ5546さん» いつもコメントありがとうございます! 更新してすぐ読んで頂いて本当に嬉しいです。書いてる自分もしんどいな……と思っているので、早く明るいシーンまで行きたいなとなってます……🥲 これからも更新頑張るのでぜひよろしくお願いいたします。 (8月4日 3時) (レス) id: a55c9bddea (このIDを非表示/違反報告)
なのこ5546(プロフ) - 最新話読みました!思わず、ナナー!!!!って叫んじゃいました😭アップルパイさんの小説大好きなのでこれからも更新楽しみにしています💘 (8月2日 7時) (レス) @page22 id: 2327b9d39c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年7月24日 22時