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「奏多くん、Aさんをなめちゃダメだよ〜?なんてったって人間ホッカイロだから」
「そのホッカイロと、羽生くんは婚約者なんだよね」
「……しまった。俺は氷の国の王子だから無理じゃん!」
「じゃあ私はホッカイロの国のお姫様ね」
「自分でお姫様とか言う?ドン引きだよ?」
「羽生くん、王子とか言っといて……ブーメランすぎない?」
「えーなに?聞こえなーい!」
「いいの、私たちはどうせ結ばれない二人だから」
「氷とホッカイロじゃねぇ…………」
「食パンマンとドキンちゃんみたいだよねぇ……」
奏多くんは、私たちを見てクールににこにこしている。
「……俺、邪魔っぽい? よかったら、どっか行くけど?」
思いがけない言葉に、笑いはすぐ引っ込んだ。
羽生くんの顔が見れない。
……正直、二人っきりにはなりたくない。
なったからって、気まずくなることはないと思うけど。
こんな中途半端な気持ちのまま羽生くんと二人になったら、かなりしんどいと思う。
羽生くんは……どうなんだろう……?
「……奏多くんも平熱低かったよね」
はい?
「ん〜……まあ、低い方だけど……」
羽生くんはにやっと笑った。
「じゃ、いてよ。奏多くんがいなくなったら、この部屋の気温が5℃は上昇しちゃって困るから!」
ほっとした。ものすごくほっとした。
「温暖化の原因は私みたいな人種なんでしょうか……? 」
「大丈夫だよ、この麦茶をひとくち飲めばすぐに氷の世界に行けるよ」
「えー……これは……毒並の苦さ……」
「さぁ早く飲んで」
羽生くんにまた麦茶をのまされる。やっぱり苦い……。
「いや…にが……!無理!」
「いいから早くこの麦茶に慣れるんだ!」
「……君たち、小学生なの……?」
奏多くんは頬杖をついて呆れたように言った。
私と羽生くんは顔を見合わせて笑いあった。
……今はまだ……これでいいよね……?
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作者名:mirin | 作成日時:2020年4月5日 17時