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初めは自分の目を疑った。
体型は成長し、筋肉質になっていた。
身長も自分より低かったのが自分を覆う程に伸びていた。
なによりその"人"と理解できたのは幼い頃から被っていた帽子だった。

そんな弟だと思う青年が突っ立っていた。
Aを探すかのように。

Aはその光景に驚愕しながらも弟に自分とバレないように身を小さくした。

弟の横を通り一息をついた、嫌、つこうとした時。
"...久しぶり、会えて嬉しい"

ああ、昔より声は低くなっていたがあまり変わっていなかった。
耳の奥でべったりとくっついてくる。
Aは昔のことがフラッシュバックし、恐怖か嫌悪かその全てが混ざった感情に侵された。

その迸る気持ち悪さに弟のことなど気にせず逃げた。
ひたすらに逃げた先は暗い路地裏だった。
流石についてきていないだろうと思い踵を返した。
そう、思いたかった。









"なんで、逃げたの...?"
暗い路地裏の壁にAを追い詰めそう問う。
涙と憎さが入り混じり顔はもうぐちゃぐちゃになっていた。
そんな"姉"の表情に弟は興奮を覚えていた。

Aがその恐怖から逃げ出そうとするといとも容易く両手首を頭の上で拘束される。
それでも抵抗の余地をみせるAに弟はため息をついた。









"動かないで、何するかわかんないから"
さっきよりも低く放った。
Aは怖かったのだ、男と女の力の差などわかっていたからだ。
自分が抵抗したところできっと阻止されてしまうだろう。
両手首を拘束し、弟は淡々と話した。

"まず、本当に再会できて嬉しい"




"お姉ちゃんは気づいてなかったんだろうけど、ずっと、ずっと好きだったんだ"




"...旅をしている間は寂しくて死にそうな時もあった"




"でも、こうやってお姉ちゃんの顔がみれて嬉しい"




"...って僕は思ってるのになんで泣いてるの"



"嫌だな、僕が知らないと思ってるの?"




"知ってた、お姉ちゃんが僕のことが嫌いなのも"




"...仕方ないよね、あんなこと言われたら僕を憎むのも分かるよ"




"...結構、辛かったんだよ"




少し、眉を顰めて言った。
Aは驚きを隠せなかった。
嫌われていると思ったいた弟から好かれていたことに。
Aはもう限界だった、正直に言ってしまった。




"私は出来損ないなんだから、辞めてよ"

泣きながらがなるAに弟は少し驚いた表情を見せたが、

"そんなことないよ、お姉ちゃん"

嗚呼、その否定が憎くって仕方がない。

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作者名:天望 | 作成日時:2021年5月31日 0時

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