EPISODE4 ページ6
気持ち悪くて動けず、暫くトイレに寄りかかっていたら玄関の扉が開く音がした。
少しバタついた足音がこっちに近づいてくる。
「───桐谷さん!?!?」
「あ………土方、さん…?」
「何かあったんですか?」
「………わた…、私…!」
安心して涙が溢れてくる。それを見兼ねた土方さんは、私を優しく抱きしめてくれた。
「もう大丈夫です。貴方はひとりじゃありません。俺は貴方の夫として、一生賭けても貴方を守りますから」
「ッ…、ありがとう、ございます……!」
煙草の匂いが鼻を掠める。
普段は苦手なその匂いも、今は暖かくて優しい匂いのように感じた。
──────────
「すみません、荷解き手伝えなくて」
「いえ…、業者の方が手伝ってくれたので、大丈夫です!
それよりも………」
夫婦なのに敬語、しかもお互い苗字呼びってどうなんだろうか。
別にタメ口などを強要している訳じゃないけれど、なんだか話しづらいなぁと。
「敬語、やめませんか…?私たち、もう夫婦なんですし」
「…!ああ、そうだな──A」
「!」
「夫婦なら、名前で呼び合った方がいいだろ?」
土方さんはそう言っていたずらっ子のように笑った。
自分の顔がみるみるうちに赤くなっていく感覚がして、すかさず手のひらで顔を隠す。赤面を見られるのは、なんとなく恥ずかしかったから。
「か、揶揄わないでください……」
そう言うと、土方さんは再び笑みを溢して
「悪い、少し調子に乗りすぎた…」
と照れくさそうに頬を掻いた。初めは怖そうな人だと思ったけれど、この人は見た目に反して優しい人だってことが分かった。
「や、やっぱりお互い好きなように喋りましょうか。私は敬語以外慣れてませんし」
「そうか。俺はこっちの方が慣れてるから、このままでもいいか?」
「あ、はい。そっちの方が堅苦しくないので」
今日から、私達の同居生活が始まる────
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朝霧。 - ちなみにプロローグに出てきたシオンの花の花言葉は、「君を忘れない」「遠くにある人を想う」「追憶」です! (2023年4月11日 21時) (レス) @page1 id: 1f3ad0d7b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧。 | 作成日時:2023年4月11日 18時