EPISODE3 ページ5
見合いから数日、私達は結婚することになった。
今日は早速新しい家に家具や私物を移動させる──引っ越し作業の日で、桐谷家の前にはトラックが停まっている。
「この家とも暫くお別れかー……」
「うおぉぉ、A!!!土方くんと幸せになるんだぞぉぉ…!!!!」
「う、うん……。父さんも、身体に気をつけて……」
ガチ泣きする父と、笑顔で手を振る母に見送られて私は車に乗り込んだ。
土方さんとは、新居で一緒に荷解きをする予定になっている。
けれど、新居に私と引越し業者の人以外の気配は無く、まだ土方さんは来ていないようだった。
「此方のベッドは何処に置いたらよろしいでしょうか?」
「あ、それはあっちの部屋に───」
そんなペースで作業をしていたら、夕方になっていた。
結局、忙しいのか土方さんは来なかったが、持ってきた家具は全て予定していた位置に配置できたので良かったと思う。
外の空気を吸おうとベランダに出たら、1人の人影が此方を見つめているように見えた。
「……!」
私の、ストーカーだった。
ストーカーはこっちを見ていやらしく笑うと、何処かへ消えていく。
(どうして新しい家の場所までバレているの)
これじゃ、いつ家の中に入られてもおかしくない。
そう思うと、全身に鳥肌が立ったような感じがした。冷や汗と涙が止まらなくなって、吐き気もする。
これは、私がいつもストーカー被害に遭った時に出る症状の一部だ。
辛い、苦しい、怖い、気持ち悪い。
そんな感情がぐるぐる渦巻いて、耐えられなくなった私はトイレの便器に嘔吐した。
「ゔぇっ……、うぅ…」
ストーカーの奴と遭遇しただけで吐くなんて、メンタルが弱すぎる。
(………ああ、)
1人って、こんなにも怖いんだ。
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朝霧。 - ちなみにプロローグに出てきたシオンの花の花言葉は、「君を忘れない」「遠くにある人を想う」「追憶」です! (2023年4月11日 21時) (レス) @page1 id: 1f3ad0d7b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朝霧。 | 作成日時:2023年4月11日 18時